判旨
統制額の存否や具体的内容は、当事者の主張自体で明らかな場合を除き、主張する当事者が立証責任を負うものであり、裁判所に職権調査の責務はない。
問題の所在(論点)
物価統制令等に基づく「統制額」の存否・内容が、裁判所が職権で調査すべき事項(公知の事実や純粋な法解釈の問題)に当たるか、それとも当事者が立証責任を負う事実(主要事実)に当たるか。
規範
法規の適用に関する前提事実であっても、各種品目・数量等により多種多様であり、かつ頻繁に変更されるような性質のもの(統制額等)については、当事者の主張自体で明白な場合を除き、当該事実を主張する当事者が立証責任を負う。裁判所は、当事者の立証にかかわりなく職権をもってこれを調査し、明らかにする責務を負うものではない。
重要事実
上告人は、本件自転車の売買代金が統制額を超過していると主張した。原審は、当該自転車が統制額の適用を受ける規格品であることの立証がないこと、また規格外の高級品等である事情が認められることから、上告人の主張を排斥した。これに対し上告人が、原判決には理由の食い違いがあると主張して上告した事案である。
あてはめ
本件における統制額は、各種品目や数量等により多種多様に設定されており、頻繁に変更される性質のものである。そのため、当事者の主張から直ちに明らかな場合でない限り、裁判所がその詳細を当然に把握していることは期待できない。本件では、当該自転車が統制額の適用を受ける規格品であるか否かについて上告人による立証がなされていない。したがって、裁判所が職権でこれを調査しなかったとしても、審理不尽や理由の食い違い等の違法があるとはいえない。
結論
統制額の事実は職権調査事項ではなく、主張する当事者が立証責任を負う。立証がない以上、統制額超過の主張を排斥した原判決は正当である。
実務上の射程
実務上、行政処分や複雑な価格規制の基礎となる事実(本判決における統制額等)について、裁判所にどこまで探知・調査義務があるかを検討する際の指標となる。公知の事実とはいえない専門的・個別的な規制事実については、弁論主義の原則通り当事者に立証責任があることを確認する際に引用できる。
事件番号: 昭和31(オ)65 / 裁判年月日: 昭和33年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】損害賠償を請求する者は、損害の発生した事実のみならず、損害の具体的な数額についても立証責任を負う。したがって、損害額の立証がないことを理由として請求を排斥することは、釈明権不行使や審理不尽の違法には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(買主)は、被上告人(売主)から買い受けた物件の一部に不良品が…