判旨
損害賠償を請求する者は、損害の発生した事実のみならず、損害の具体的な数額についても立証責任を負う。したがって、損害額の立証がないことを理由として請求を排斥することは、釈明権不行使や審理不尽の違法には当たらない。
問題の所在(論点)
不完全履行に基づく損害賠償請求において、請求者は損害額についても立証責任を負うか。また、損害額の立証がないことを理由に請求を排斥することは、裁判所の釈明権不行使または審理不尽の違法を構成するか。
規範
損害賠償を請求する者は、自己に損害が発生した事実だけでなく、その損害の具体的な数額についても立証すべき責任を負う。立証責任を負う者が損害額を立証できない場合、裁判所はその請求を棄却することができ、その際、特段の事情がない限り、裁判所に損害額を明らかにするための釈明やさらなる審理を行う義務はない。
重要事実
上告人(買主)は、被上告人(売主)から買い受けた物件の一部に不良品があったとして、不完全履行に基づく損害賠償金15万円を請求した。原審は、物件の一部に不良品があった事実は認めたものの、上告人の立証によっては、不完全履行により15万円の損害を受けたという具体的な損害額の事実は認められないと判断し、請求を棄却した。これを不服として、上告人が採証法則違反や釈明権不行使等を理由に上告した事案である。
あてはめ
本件において、上告人は被上告人の不完全履行による損害を主張しているが、その損害額が15万円にのぼることを裏付ける証拠がないと判断されている。損害賠償請求における立証責任は、損害の発生およびその数額の双方について請求者が負うものであるから、上告人が損害額を十分に立証できなかった以上、その不利益は上告人が負わねばならない。したがって、原審が損害額の立証不足を理由に請求を棄却した判断は正当であり、裁判所がさらなる釈明や審理を行わなかったとしても、釈明権不行使等の違法は存在しないといえる。
結論
損害賠償請求者は損害額の立証責任を負うため、立証がない場合に請求を棄却することは適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
民法上の損害賠償請求全般における立証責任の所在を明確にするものである。司法試験においては、損害の発生が認められても額の算定が困難な場面で、民事訴訟法248条の適用の前提として、原則的な立証責任の所在を指摘する際に活用できる。また、裁判所の釈明義務の限界を示す素材としても有用である。
事件番号: 昭和25(オ)258 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が商法526条に基づく代金減額等の法的効果を意図したとしても、その主張を明確にし適切な立証をなすのは当事者自身の責務であり、これを行わない場合に裁判所が釈明権を行使しなかったとしても違法とはいえない。 第1 事案の概要:売掛代金請求事件において、被告(上告人)は品物が粗悪である旨の陳述をした…