臨時物資需給調整法に基く加工水産物配給規則第二条によつて指定された物資については、法定の除外事由その他特段の事情の存しない限り、同規則第三条以下所定の集荷機関、荷受機関、登録小売店舗等の機構を通ずる取引のみが有効であつて、右以外の無資格者による取引は無効と解すべきである。
「配給統制違反」の売買を無効とした一事例
民法91条
判旨
戦後の経済統制下における臨時物資需給調整法に基づく加工水産物配給規則は、指定された物資の流通経路を厳格に限定することで産業の回復振興を図る趣旨の強行法規であり、無資格者による取引の私法上の効力を否定する。
問題の所在(論点)
臨時物資需給調整法および加工水産物配給規則の規定に反して行われた指定配給物資の取引は、私法上無効となるか(強行法規性の有無)。
規範
特定の行政法規が、単なる取締法規にとどまらず、公の目的達成のために特定の取引機構を通さない取引を禁止する趣旨である場合、当該法規は私法上の効力を制限する強行法規と解される。
重要事実
上告人は、臨時物資需給調整法および加工水産物配給規則によって指定配給物資とされていた「煮乾いわし」を、同規則所定の集荷機関、荷受機関、登録小売店舗等の正規の配給機構を通さずに売買した。この無資格者間の取引の私法上の有効性が争点となった。
あてはめ
臨時物資需給調整法は産業の回復振興という国家的政策の実施を確保するためのものであり、同法に基づく配給規則は物資の需給調整方法を特定している。同規則は、法定の除外事由等がない限り、正規の配給機構を通ずる取引のみの効力を認め、それ以外の無資格者による取引の効力を認めない趣旨であると解される。したがって、本件「煮乾いわし」の売買は、当該強行法規に抵触するものである。
結論
本件売買契約は、強行法規である加工水産物配給規則に違反するため、私法上無効である。
実務上の射程
行政法規違反が私法上の契約の効力に及ぼす影響を判断する際、当該法規の目的が特定の流通秩序の維持にある場合には、強行法規として私法的効力を否定する根拠となる。もっとも、現代の経済法規においては、公序良俗(民法90条)の解釈の一要素として、取締法規の目的と私法的効力制限の必要性を相関的に考慮する際の基本的視座を示すものである。
事件番号: 昭和31(オ)1074 / 裁判年月日: 昭和35年9月16日 / 結論: 棄却
統制法規に違反した売買契約に基く給付が、民法第七〇八条にいう不法原因によるものかどうかは、その行為の実質が当時の国民生活並びに国民感情に照らし反道徳的な醜悪な行為としてひんしゆくすべき程度の反社会性を有するかどうかによつて決するのが相当である。