判旨
判決理由において、抗弁事実と反対の事実を積極的に証拠を挙げて認定している場合には、抗弁を排斥したことが明白であり、理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
判決理由において、当事者が主張した抗弁について直接的な判断を示さず、単にそれと矛盾する事実を認定した場合、理由不備(民事訴訟法上の上告理由)となるか。
規範
判決書に理由を記載すべきとする民事訴訟法の要請に関し、ある事実を認定したことによって、それと両立しない反対事実(抗弁事実等)が否定されることが論理的に明白であるならば、特段の事情がない限り、理由不備の違法は認められない。
重要事実
上告人は原審において何らかの抗弁を主張したが、第一審判決(およびそれを引用・付加した原判決)は、証拠を挙げて当該抗弁事実と相反する事実を積極的に認定した。上告人は、これが事実認定や証拠採否に誤りがあるとして上告を申し立てた。
あてはめ
本件では、判決理由の中で積極的に証拠を提示した上で、抗弁事実と両立し得ない反対の事実が認定されている。このような場合、裁判所は実質的に抗弁を検討し、これを排斥する判断を示したものと評価できる。したがって、単なる事実認定や証拠採否の当否を争うことは、適法な上告理由には当たらない。
結論
抗弁事実と反対の事実を証拠に基づき認定している以上、理由不備の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟における「理由不備」の主張に対し、判決全体から論理的に排斥が読み取れるかという視点を与える。答案上は、理由不備(民訴法312条2項6号等)の成否を論じる際、間接的な事実認定による排斥の有効性を説明する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)620 / 裁判年月日: 昭和32年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が複数の証拠を総合して事実認定を行う際、特定の証人が唯一の証拠方法でないことが明らかであれば、その証拠調べの要否に関する訴訟手続上の違法は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の事実認定に訴訟法違反があると主張した。具体的には、証人Dの証言等に関連して、証拠調べの手続や事実認定の合…