判旨
裁判所が証拠の真実性について心証を得られないと判断した場合、その心証を得るに至らなかった理由を必ずしも判決書に説示する必要はなく、自由な心証に基づく事実認定は経験則に反しない限り適法である。
問題の所在(論点)
裁判所が特定の証拠の信憑性や事実の存否について心証を得られなかった場合、その具体的な理由を判決書に記載する必要があるか。また、自由心証主義に基づく事実認定の限界が問題となる。
規範
裁判所は、当事者が主張する事実について、挙示された証拠を総合して検討し、真実であるとの心証を得るに足りない場合には、その事実を認定しないことができる(自由心証主義)。また、特定の証拠について「真実であるとの心証を得られない」と判断した場合、判決文においてその詳細な理由を説示することは必ずしも必要ではない。
重要事実
上告人は、特定の入金の事実を主張し、証拠(甲第1号証の11)を提出したが、原審は他の証拠と対比した結果、当該事実に係る心証を得るに足りないとしてこれを認めなかった。また、裁判所の構成が変わった際、弁論更新前に証人尋問の告知が行われた点や、特定の供述調書の信憑性を否定した理由が判決文に詳述されていない点について、上告人が違法を主張して上告した事案である。
あてはめ
原判決は、上告人に有利な証拠を参酌した上でも、入金の事実を認定するに足りる心証を抱くに足りないと判示している。これは証拠の総合評価に基づく事実認定であり、その過程が経験則に反するものとは認められない。また、供述調書について他の証拠と対比して心証を得られないとした点についても、理由を判決文中に詳説する必要はない。弁論更新の手続についても、判決に関与した裁判官により最終的に更新されており、主文に影響を及ぼす違法はない。
結論
事実認定は原審の自由な心証に委ねられており、その理由に詳述を欠くとしても違法とはいえない。上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟における自由心証主義(民訴法247条)の運用に関し、裁判所の事実認定の裁量を広く認めるものである。特に「証拠の不採用理由」や「心証不形成の理由」の説示義務を緩和している点で、実務上の判決書作成の基準を示している。
事件番号: 昭和24(オ)181 / 裁判年月日: 昭和25年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定の妥当性について、挙示された証拠に基づく判断が経験則に反しない限り、原審の適法な事実認定は上告理由とならない。 第1 事案の概要:上告人は、甲第1号証(契約書等)や乙第1号証の記載、および被上告人本人の供述等を根拠として、本件取引の本質が売買であると主張した。また、玄米交付の履行を請求する…