判旨
裁判所は、判決中に計算の誤り、書き損じ、その他これらに類する明白な誤りがあるときは、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
問題の所在(論点)
判決書における判例引用の年月日および頁数の誤記が、民事訴訟法上の「判決の更正」の対象となる「明白な誤り」に該当するか。
規範
判決に計算の誤り、書き損じその他これに類する明白な誤りがある場合には、裁判所は申立てにより又は職権で更正決定をすることができる(民事訴訟法257条1項参照)。この「明白な誤り」とは、判決内容と表示との不一致が判決書自体の記載や訴訟記録等に照らして客観的に明らかな場合を指す。
重要事実
最高裁判所が昭和30年10月7日に言い渡した預金返還請求事件(昭和28年(オ)第622号)の判決理由において、引用した大審院判決の年月日および掲載頁の記載に誤りがあった。具体的には「大正7年10月2日(民録25輯195頁)」と記載すべきところ、正しくは「大正7年10月12日(民録24輯1954頁)」であった。
あてはめ
本件判決理由における引用判例の特定に関する記載は、日付および出典の数字に誤りがある。このような形式的な記述の誤りは、判決の本体的判断に影響を及ぼすものではなく、客観的にみて「書き損じその他これに類する明白な誤り」に該当すると評価できる。
結論
判決中の誤記を「大審院大正七年一〇月一二日(民録二四輯一九五四頁)」と更正する決定を行う。
実務上の射程
判決の更正(民訴法257条)の典型例を示す。判例の引用ミスのような付随的事項の誤記は、判決の既判力や執行力に直接影響しないため、職権による更正が認められやすい。答案上は、判決の確定後であっても、判断内容の実質的変更を伴わない形式的な不一致であれば、更正制度によって修正可能であることを説明する際に参照すべき事例である。
事件番号: 昭和33(オ)1120 / 裁判年月日: 昭和35年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書の記載に明白な誤記がある場合でも、それが判決の結論に影響を及ぼさないときは、上告理由とはならず、更正決定によって訂正されるべきものである。 第1 事案の概要:上告人は、主債務者である訴外Dの死亡年月日について、原審が証拠(戸籍抄本等)と異なる「昭和30年10月」と認定した点に理由齟齬の違法が…
事件番号: 昭和28(オ)847 / 裁判年月日: 昭和30年8月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決中に明白な誤謬があるときは、裁判所は職権によって更正決定をすることができる。本件では参照判例の事件番号の誤記を更正した。 第1 事案の概要:最高裁判所が昭和30年6月24日に言い渡した土地所有権移転登記手続請求事件の判決理由において、引用した大正13年の連合部判決の事件番号を「大正12年(オ)…