判旨
判決書の記載に明白な誤記がある場合でも、それが判決の結論に影響を及ぼさないときは、上告理由とはならず、更正決定によって訂正されるべきものである。
問題の所在(論点)
判決書における事実(死亡年月日)の誤記が、民事訴訟法上の上告理由(理由の齟齬)に該当するか、あるいは更正決定の対象にとどまるか。
規範
判決書に計算の誤り、写し間違いその他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は更正決定(民事訴訟法257条、旧法194条)により訂正すべきである。かかる誤りが判決の主文や、結論を導く判断の基礎となる事実認定の根幹に影響を及ぼさない限り、破棄理由としての「理由の齟齬」には当たらない。
重要事実
上告人は、主債務者である訴外Dの死亡年月日について、原審が証拠(戸籍抄本等)と異なる「昭和30年10月」と認定した点に理由齟齬の違法があると主張した。記録上、正しい死亡年月日は「昭和31年10月11日」であり、原判決の基礎となった証人尋問等の結果も昭和31年を前提としていた。しかし、原判決は誤って昭和30年と記載していた。
あてはめ
本件における死亡年月日の記載の誤りは、証拠関係に照らせば明白な誤記といえる。しかし、この誤りは、債務が完済された事実は認められないという原判決の主要な判断(結論)を左右するものではない。すなわち、死亡の前日に督促が行われたという事実関係の前後関係や債務の存否に関する実質的な判断には影響を及ぼしていない。したがって、本件の誤りは判決の結論に影響を及ぼす違法とはいえず、更正決定の手続きによって訂正されるべき性質のものである。
結論
判決書の明白な誤記が結論に影響しない場合、上告理由は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
判決の更正(民訴法257条)の対象となる「明白な誤り」の限界を示す。実務上、事実認定に一部誤りがあっても、それが判決の論理構成や結論に影響しない「軽微な誤記」であれば、上告による救済ではなく更正決定の問題として処理されることを確認する際に用いる。
事件番号: 昭和31(オ)553 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において原審の証拠の取捨判断及び事実認定の適否を争うことは、単なる事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人が、原審における証拠資料の評価や事実認定のプロセスに不服があるとして、過去の判例を引用しつつ原判決の取消しを求めて上告した事案。 第2 問題の所在…