主張事実と認定事実との間に原判示程度(原判決参照)の差異があるからといって、事実の同一性を害するものとは認められないから、弁論主義に反しない。
弁論主義に反しないとされた事例。
民訴法186条
判旨
当事者の主張と裁判所の認定事実に差違があっても、それが僅少であり事実の同一性を害さない限り、弁論主義に違反しない。
問題の所在(論点)
裁判所が当事者の主張と異なる事実を認定した場合に、どの程度の差違であれば弁論主義違反(民事訴訟法上の不意打ち認定)となるか。
規範
弁論主義の下では、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎とすることはできない。しかし、主張事実と認定事実の間に差違がある場合であっても、それが事実の同一性を害しない程度の僅少なものであれば、当事者の主張の範囲内のものとして許容される。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)が認定した事実が被上告人の主張事実と相違しており、当事者が主張していない事実を認定した違法(弁論主義違反)があるとして上告した。判決文からは具体的な争点となった事実の詳細は不明であるが、原審の認定と主張の間に一定の差違が存在していたことは認められる。
あてはめ
本件における主張事実と認定事実の差違は「僅少の差違」にすぎない。このような軽微な相違は、社会通念上あるいは訴訟上の攻撃防御の観点から見て、事実の同一性を損なうほどのものではないと評価される。したがって、裁判所が当該事実を認定したことは、当事者の主張の枠組みを逸脱したものとはいえない。
結論
事実の同一性を害するほどの差違ではないため、当事者の主張しない事実を認定した違法があるとはいえず、弁論主義違反には当たらない。
実務上の射程
弁論主義(第1テーゼ)の限界を示す判例である。答案上では、主要事実の認定において主張と認定が微妙に食い違う場合に、本判例を引用して『事実の同一性を害しない範囲の認定』として正当化する際の根拠となる。
事件番号: 昭和31(オ)553 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において原審の証拠の取捨判断及び事実認定の適否を争うことは、単なる事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人が、原審における証拠資料の評価や事実認定のプロセスに不服があるとして、過去の判例を引用しつつ原判決の取消しを求めて上告した事案。 第2 問題の所在…