判旨
当事者間に争いがない事実、および第一審判決が維持した事実関係に基づき、請求の対象物が特定されている以上、原判決に理由の食い違い等の違法は存在しない。
問題の所在(論点)
民事訴訟法上の理由齟齬の有無。特に、引渡を求める対象物(株式申込金領収証)の特定に疑義があり、判決の理由に矛盾が生じているといえるか。
規範
判決に理由の齟齬があるか否かは、当事者の主張および第一審から引き継がれた事実関係の確定状況を総合し、請求の対象(訴訟物の特定)に疑義が生じていないかという観点から判断される。
重要事実
被上告人は、D紡績株式会社の新株100株に関する株式申込金領収証の引渡しを求めて提訴した。第一審において、対象が当該領収証である点については当事者間に争いがなかった。原審(第二審)は審理の結果、この第一審判決を維持し、その記載を引用して引渡請求を認容した。
あてはめ
本件では、引渡しを求める領収証が「D紡績株式会社新株100株」に関するものである点について、第一審以来当事者間に争いがない。原判決が引用した第一審判決の認容内容も、当該特定の領収証の引渡請求権である。判決の行文上、請求対象の特定に疑いを容れる余地はないため、論理的な矛盾や理由の齟齬は認められない。
結論
原判決に理由齟齬の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
訴額や対象物の特定が当事者間の合意や一審での審理を通じて明確化されている場合、判決理由の不備や齟齬を突く上告理由は認められにくいことを示している。実務上は、訴額や対象物の属性に関する「争いのない事実」の確定がいかに判決の安定性に寄与するかを確認する事例である。
事件番号: 昭和32(オ)131 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和39(オ)1305 / 裁判年月日: 昭和40年5月28日 / 結論: 棄却
控訴取下の効力を判断する審理において、口頭弁論終結後、取下の無効を主張する当事者が取下の新たな瑕疵を主張して弁論再開を申請したときは、裁判所は必ず弁論再開を許さなければならないと解することはできない。
事件番号: 昭和34(オ)992 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が原判決の判断を正当として是認し、大審院判例と同趣旨であると解される場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人が、原判決の判断に不服があるとして上告を提起した事案。上告理由は二点あり、第一点は独自の見解に基づく主張、第二点は大審院判例(民集12巻375頁)との抵触を主張する…