判旨
補償契約の対象物件及び権利の所在が同一であれば、一方の契約主体が個人であり、他方の契約主体が当該個人の代表する会社であっても、二重契約を禁止する定款所定の「他に損害補償の契約をなした場合」に該当する。
問題の所在(論点)
個人名義で補償契約を締結した後、自らが代表を務める会社名義で同一物件につき他と補償契約を締結した場合、定款上の「他に損害補償の契約をなした場合」に該当し、補償請求権が否定されるか。
規範
損害補償契約において、他の補償契約の締結を制限する規定の適用を検討するにあたっては、形式的な契約当事者の名義のみならず、補償の対象となる物件の実質的な所有関係、及び当該物件にかかる権利の所在が同一であるか否かを基準に判断すべきである。
重要事実
上告人は、自己が所有しない建物・商品・什器等(実際は上告人が代表を務めるE社の所有)について、個人名義で被上告人との間に災害補償契約を締結した。その後、上告人はE社の代表者として、全く同一の物件を対象に別の協会(D協会)とも補償契約を締結した。上告人は、D協会との契約事実を被上告人に対して故意に秘匿していた。被上告人の定款14条には「入会後他に損害補償の契約をなした場合」は補償請求権を有しない旨の規定があった。
あてはめ
本件では、被上告人との契約主体は上告人個人であり、D協会との契約主体はE社であって形式的な名義人は異なる。しかし、両契約の対象となった建物や什器等は、実質的にはいずれもE社の所有に属する同一の物件である。また、上告人はE社の代表者として後者の契約を締結しており、補償の対象及びその権利の所在は実質的に同一といえる。加えて、上告人が後者の契約をことさらに秘匿していた事実は、二重補償を制限する趣旨に反する。したがって、本件は実質的に二重契約の状態にあり、定款の禁止規定に抵触すると評価される。
結論
上告人は被上告人の定款14条に該当し、災害が発生しても補償請求権を有しない。
実務上の射程
保険法や共済約款における重複保険の通知義務や禁止規定の解釈において、法人格の別を超えて実質的な被保険利益の同一性を認定する際の論拠となり得る。特に、一人会社や同族会社の代表者が個人名義と会社名義を使い分ける事案において、禁反言や信義則に近い理屈で実質的同一性を認める射程を持つ。
事件番号: 平成25(オ)918 / 裁判年月日: 平成27年12月14日 / 結論: その他
本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として,反訴において,当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許される。
事件番号: 平成30(受)2064 / 裁判年月日: 令和2年9月11日 / 結論: 破棄自判
請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に,本訴原告が,反訴において,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許される。
事件番号: 平成27(受)330 / 裁判年月日: 平成28年4月28日 / 結論: 棄却
破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属する。