判旨
当事者の抗弁に特定の事実上の主張が明示的に記載されていない場合であっても、その主張を包含するものと認められるときには、裁判所はこれを事実として認定することができる。
問題の所在(論点)
当事者が提出した抗弁に特定の事実上の主張が明示されていない場合において、裁判所が当該事実を認定することが、弁論主義や理由不備の観点から許容されるか。
規範
当事者の提出した抗弁の記載が必ずしも明確でない場合であっても、抗弁の内容を合理的に解釈し、その中に前提となる事実上の主張が包含されていると認められるときは、弁論主義の範囲内において当該事実を認定の基礎とすることができる。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)における被上告人の抗弁には原審が認定した事実上の主張が含まれていない旨を主張し、判決に違法があると争った。しかし、原審の記録によれば、被上告人の抗弁には当該事実上の主張を包含するものと認められる状況であった。
あてはめ
最高裁は、記録を精査した結果、原審における被上告人の抗弁には「原審認定の事実上の主張を包含するものと認められないことはない」と判示した。つまり、文言上完全に一致していなくとも、主張の趣旨から事実が包含されていると評価できるため、裁判所がその事実を認定しても不意打ちにはならないと解される。
結論
被上告人の抗弁には必要な事実上の主張が含まれていると認められるため、原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
裁判所による主張の合理的な釈明・評価の限界を示す。答案上は、当事者の主張が不明確な際に、釈明権の行使や主張の合理的な解釈によって、認定の基礎となる事実を拾い上げる際の論理として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1277 / 裁判年月日: 昭和39年7月17日 / 結論: 棄却
主張事実と認定事実との間に原判示程度(原判決参照)の差異があるからといって、事実の同一性を害するものとは認められないから、弁論主義に反しない。