判旨
自白が真実に反するとの主張があっても、原審が証拠に基づき当該自白が真実に反しないと合理的に認定した場合には、その事実認定を不当として争うことはできない。
問題の所在(論点)
上告人が金員を借り入れたとする自白について、それが真実に反するものであるとして撤回を認めるべきか、また原審の事実認定の妥当性が問題となった。
規範
裁判上の自白が成立した場合、その事実に反する認定は原則として許されないが、自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるときは撤回が認められる。もっとも、原審が挙示する証拠により、自白内容が真実に反しないと合理的に認定した場合には、その事実認定は事実審の専権に属し、上告審においてこれを不当と非難することはできない。
重要事実
上告人は、被上告組合と訴外会社間の海産物取引を斡旋したに過ぎないと主張したが、原審は証拠に基づき、上告人が知人である訴外Eを被上告組合に紹介した際、売買代金に充てる金子として、自己の責任において被上告組合から本件金員を借り入れたものと認定した。上告人は、自白が真実に反する旨を主張して争った。
あてはめ
原判決は、証拠関係を精査した上で、上告人が単なる仲介者ではなく自己の責任で借入れを行ったという実態を認定している。この認定によれば、上告人が自白した「借入れの事実」は客観的真実に合致しており、自白が真実に反するとの主張は前提を欠く。このような証拠の取捨選択と事実認定は原審の裁量権の範囲内であり、経験則に反する等の特段の事情がない限り、上告審において認定を覆すことはできない。
結論
本件上告は棄却される。原審による「自白は真実に反しない」との認定に違法はなく、自白の拘束力は維持される。
実務上の射程
自白の撤回を主張する実務上の局面において、単に真実に反すると主張するだけでは足りず、原審の証拠評価を覆すほどの立証が必要であることを示唆している。事実認定の専権に関する判示として、事実誤認を理由とする上告の限界を確認する際に参照される。
事件番号: 昭和33(オ)96 / 裁判年月日: 昭和35年8月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白は、それが錯誤に基づき、かつ真実に反する場合に限り、相手方の同意がなくても撤回することができる。 第1 事案の概要:上告人(被告)が、訴訟過程において残債務の存在を認める趣旨の陳述(自白)を行った。しかし、後に上告人は、当該自白は錯誤に基づくものであるとして、相手方の同意を得ることなく…