判旨
裁判上の自白を撤回するためには、自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づいたものであることを自白者が立証しなければならない。
問題の所在(論点)
裁判上の自白を撤回するための要件、およびその立証責任の所在が問題となる。
規範
裁判上の自白が成立した場合、当事者はこれを任意に撤回することはできない。例外的に撤回が許されるのは、その自白が「真実に反し」かつ「錯誤に出たこと」を自白者が立証した場合に限られる。
重要事実
上告人は、甲第1号証および第2号証の成立について裁判上の自白をしたが、後にこの自白が真実に反し錯誤に基づくものであると主張して、自白の取り消し(撤回)を求めた。原審は、当該自白が真実に反し錯誤に出たことを認めるに足りる証拠がないと判断した。
あてはめ
本件において、上告人は自白の撤回を主張しているが、原審によれば「自白が真実に反し錯誤に出たことを認めるに足りる証拠はない」とされる。自白の撤回が認められるためには、自白者が錯誤の存在等を立証しなければならないところ、本件ではその立証が尽くされていない。したがって、立証がない以上、自白の撤回は許されないと解される。原判決に一部不適切な説示(蛇足)があったとしても、立証責任の法理に照らせば結論に影響はない。
結論
自白が真実に反し錯誤に基づくことの立証がない限り、自白の取り消しは許されない。
実務上の射程
自白の撤回要件のうち「錯誤」については、真実に反することの証明があれば錯誤が推定されるとするのが判例(最判昭25・12・22等)の通説的理解であるが、本判決は立証責任が自白者側にあることを明確に示しており、答案上も「真実反意+錯誤」の要件と「自白者による立証」をセットで論じるべきである。
事件番号: 昭和37(オ)30 / 裁判年月日: 昭和38年5月30日 / 結論: 棄却
(省略)