判旨
代表取締役の退任により代表権が消滅しても、これを相手方に通知しない限り、訴訟手続上は依然として代表権が存続するものとみなされ、訴訟手続の中断は生じない。また、代表権消滅前に適法に授与された訴訟代理権は、代表権の消滅によって消滅しない。
問題の所在(論点)
代表取締役の退任による代表権消滅が通知されていない場合、訴訟手続は中断するか。また、代表権消滅により、生前に授与された訴訟代理権は消滅するか。
規範
1. 株式会社の代表者の代表権が消滅した場合であっても、その旨を相手方に通知しない限り、訴訟手続上は代表権の消滅を相手方に対抗できず、民事訴訟法上の訴訟手続の中断(現行民訴法124条1項3号参照)は生じない。2. 代表者の代表権が消滅したとしても、当該代表者が適法に授与した訴訟代理権は消滅しない(現行民訴法58条1項参照)。
重要事実
被上告会社の代表取締役Dが退任し、その代表権が消滅した。しかし、被上告会社側から相手方(上告人ら)に対し、Dの代表権消滅に関する通知がなされた事実は認められなかった。また、Dは退任前に弁護士に対し、第一審のみならず控訴審および上告審についても訴訟代理権を授与する委任状を提出していた。上告人らは、代表権の消滅により訴訟手続が中断すべきであり、受継手続なくなされた原審の手続は違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件では、代表取締役Dの代表権消滅が相手方に通知されていない。そのため、訴訟上は依然としてDの代表権が存続するものと扱われ、民事訴訟法210条(現行124条1項3号)による中断は生じないといえる。したがって、受継手続を経ずに原審の手続が進められたとしても違法ではない。さらに、Dから弁護士へは上告審まで含めた包括的な授権がなされており、代表権が消滅しても訴訟代理権は消滅しない(現行58条1項)ため、代理人による訴訟追行も有効である。
結論
代表権消滅の通知がない限り訴訟手続は中断せず、また既授与の訴訟代理権も消滅しないため、受継手続のない原審の手続は適法である。
実務上の射程
法人の代表者交代時における訴訟手続の安定性を確保する実務上重要な判例である。答案上は、中断(124条)の成否を検討する際、通知の有無を要件として指摘し、あわせて訴訟代理権の不消滅(58条1項)に言及する形で活用する。
事件番号: 昭和35(オ)924 / 裁判年月日: 昭和38年10月30日 / 結論: 棄却
弁護士法第二五条第一号違反の訴訟行為であつても、相手方がこれを知り又は知り得たにもかかわらず異議を述べることなく訴訟手続を進行させ、第二審の口頭弁論が終結したときは、相手方は、後日に至りその無効を主張することは許されないものと解するのが相当である。