株式会社の代表取締役の解任の効果は、取締役会の解任決議によつて生じ、当該代表取締役であつた者に対する告知があつてはじめて生ずるものではない。
代表取締役の解任と告知の要否
商法261条
判旨
取締役会による代表取締役の解任決議がなされた場合、その通知や告知を待つことなく、決議によって当然に代表権は消滅する。
問題の所在(論点)
取締役会による代表取締役の解任決議の効力発生時期が問題となる。具体的には、決議のみによって直ちに代表権消滅の効力が生じるのか、それとも被解任者への告知が必要か。
規範
株式会社における取締役会の代表取締役解任決議は、代表取締役の会社代表機関としての地位を剥奪するものである。したがって、当該決議によって代表権は当然に消滅し、その効力発生のために本人への告知を要するものではない。
重要事実
株式会社の代表取締役であったDは、昭和26年10月5日に取締役会で解任決議がなされ、同月17日にその登記が完了した。しかし、Dは解任後の時期に、被上告会社を代表して上告人らから金銭を借り入れる行為(本件借受行為)を行った。上告人らは、解任決議が本人に告知されるまでは解任の効力は生じないとして、本件借受行為の効力が会社に帰属すると主張した。
あてはめ
本件において、Dを代表取締役から解任する取締役会決議がなされた以上、その時点でDの代表機関としての地位は失われたと解される。本人への告知がないことを理由に解任の効果を否定することはできない。したがって、その後にDが行った借受行為は、代表権のない者によってなされた行為であり、会社に対してその効果は及ばない。なお、表見代理等の主張については、原審で適切になされておらず判断の対象外である。
結論
代表取締役の解任は決議によって当然に効力を生じるため、解任後のDによる借受行為について、会社は責任を負わない。上告棄却。
実務上の射程
代表取締役の解任時期を明確化した判例であり、会社法における内部的意思決定と外部への代表権の関係を整理する際に用いる。実務上、解任の効力自体は決議で生じるが、善意の第三者との関係では、登記の前後によって法908条1項(旧商法12条)の適用の有無が問題となる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和48(オ)531 / 裁判年月日: 昭和48年12月11日 / 結論: 棄却
会社が取締役に貸し付けた金員の返還を求めた場合に、その取締役は、商法二六五条違反を理由として右貸付けの無効を主張することができない。