判旨
民事訴訟法第115条1項(旧201条)の既判力の主観的範囲について、新法施行前に確定した判決であっても新法施行後の承継人に対してその効力が及ぶ。また、訴えの変更(同法143条)における「請求の基礎に変更がない」とは、変更後の請求が従前の請求と経済的利益において共通性を有することを指す。
問題の所在(論点)
1. 共有持分確認および利益分与請求を損害賠償請求に変更することは「請求の基礎に変更がない」といえるか。 2. 旧民事訴訟法施行前に確定した判決の既判力は、新法施行後の当事者の承継人に及ぶか(既判力の主観的範囲の遡及的適用)。
規範
1. 既判力の主観的範囲(民訴法115条1項3号):新法施行前に確定した判決であっても、その後の口頭弁論終結後の承継人に対しては、民事訴訟法施行法2条に基づき、既判力(新法115条相当)が及ぶ。 2. 請求の基礎(同法143条1項):新旧両請求が、その基礎とする経済的利益において共通性を有する場合には、請求の基礎に変更がないと解される。
重要事実
被上告人(原告)は当初、本件土地の共有持分権の確認および伐採された丸太の価格分与を請求していた。しかし、上告人(被告)が丸太を処分したため、被上告人は請求を損害賠償請求へと変更した。上告人は、この変更は請求の基礎を欠き不当であると主張した。また、本件土地については過去の確定判決(前事件判決)により被上告人の前主Dの単独所有が確定していたが、上告人はその前主Eの承継人として、新法施行前の判決の既判力は及ばないと主張した。
あてはめ
1. 請求の変更について:当初の丸太価格分与請求と、処分後の損害賠償請求は、いずれも「丸太から得られる経済的利益」を目的とする点で共通している。したがって、両者は請求の基礎とする経済的利益において何ら異なるところはなく、請求の基礎に変更はないといえる。 2. 既判力について:民事訴訟法施行法2条は、新法施行前に生じた事項にも新法を適用する旨定めている。大正14年に確定した前事件判決により、Eに対するDの勝訴(単独所有)は確定している。新法115条1項3号(旧201条)に基づき、敗訴したEの承継人である上告人らに対し、勝訴したDの承継人である被上告人は、既判力を主張し得る。
結論
1. 請求の変更は適法であり、訴訟手続を著しく遅滞させるものとは認められない。 2. 前事件判決の既判力は上告人らに及び、本件土地が被上告人側の所有であることは確定しているため、上告人の主張は排斥される。
実務上の射程
訴えの変更における「請求の基礎」の判断基準として「経済的利益の共通性」を挙げた点は、実務上極めて重要な指標となる。また、既判力の主観的範囲を定める規定が、新法施行前の確定判決の承継人に対しても当然に適用されることを明示した。
事件番号: 昭和39(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和41年3月3日 / 結論: その他
共有者は、共有物に対する不法行為によりこうむつた損害について、自己の共有持分の割合に応じてのみ、その賠償を請求することができる。