判旨
特別上告において、憲法違反を主張していても、その実質が単なる法令違反や事実誤認の主張に帰着する場合には、適法な上告理由に当たらない。また、原審がそのような実質を欠く憲法違反の主張に対して判断を下したとしても、それは法律上無用の判示であり、当該判断を攻撃しても上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
特別上告における上告理由として、形式的に憲法違反を主張しているものの、その実質が単なる法令違反や事実誤認の主張である場合に、適法な上告理由として認められるか。また、原審が実質を欠く憲法違反の主張に対してなした判断を攻撃することが、上告理由となり得るか。
規範
特別上告(民事訴訟法第409条の3、現行第336条第1項等)が認められるためには、実質的に憲法違反の事由が含まれていることが必要である。単に「憲法違反」という語を用いていても、その主張の実質が、法令の適用を誤ったことや事実認定の誤りを指摘するにとどまる(単なる法令違背・事実誤認の主張である)場合には、適法な上告理由として構成されない。加えて、原審による憲法適否の判断が実質を欠く主張に対するものである場合、それは「法律上無用の判示」であり、上告理由の根拠とはなり得ない。
重要事実
上告人は、原審において憲法違反を主張したが、原審はこれに対し憲法適否の判断を下した上で上告人の請求を退けた。上告人は、最高裁判所への特別上告に際し、第一ないし第三の論旨に加え、第四の論旨において改めて憲法違反を主張した。しかし、これらの主張は実質的には裁判所の法令適用の誤りや事実認定の不当を訴える内容であった。
あてはめ
上告人の主張する論旨は、憲法違反という表現を借りているものの、その実質を検討すれば、原審における法令適用の当否や事実の把握の誤りを指摘するものに帰着する。このように、実質的に憲法問題を含まない主張は、特別上告の要件を満たさない。また、原審が上告人の主張に基づき憲法判断を行っているものの、そもそも主張自体に実質的な憲法上の争点が欠けていた以上、原審の当該判断は「法律上無用の判示」と言わざるを得ない。したがって、この無用な判示部分の誤りを上告段階で攻撃したとしても、それは適法な上告理由を構成するものとは評価されない。
結論
本件上告は適法な上告理由を欠くため、棄却される。
実務上の射程
特別上告の理由を検討する際、単に憲法条項を引用するだけでなく、具体的かつ実質的な憲法違反の有無が問われることを示す。答案作成上は、形式的な憲法違反の主張を排斥し、上告受理の適格性を論ずる際の基準として活用できる。
事件番号: 昭和27(テ)4 / 裁判年月日: 昭和29年4月8日 / 結論: 棄却
原上告判決の判断が、東京控訴院の判例に反し且つ憲法第七六条第三項に違反したものであるというだけで、原上告判決において法律等が憲法に適合するか否かについて為した判断の不当であることを理由とするものでないときは、再上告適法の理由とはならない。
事件番号: 昭和33(テ)1 / 裁判年月日: 昭和33年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別上告において憲法違反が主張されていても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決に憲法違反がある旨を主張して特別上告を提起した。しかし、その主張の内容を精査したところ、憲法問題に名を借りた単なる訴訟法違反の指摘にとど…