判旨
当事者間に旧債務を消滅させ新債務を発生させる合意(更改)が認められる場合には、旧債務の保証債務も消滅する。主債務者、債権者、および新たな保証人の三者間で新債権債務関係を発生させる旨の契約が成立したときは、特段の事情がない限り、当初の保証債務は消滅すると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
主債務の内容変更や新たな保証人の加入を伴う合意がなされた場合に、当初の保証人が負っていた旧保証債務が消滅したといえるか。具体的には、当事者間に更改(旧債務を消滅させ新債務を発生させる意思)が認められるかが問題となる。
規範
債権の要素を変更することにより新債務を成立させ旧債務を消滅させる合意(民法513条以下)がある場合、旧債務に従属する保証債務も原則として消滅する。この「債権の要素の変更」には、主債務者が同一であっても、保証人を入れ替えるなどの債権債務関係の全体的な再構築が含まれ、当事者に旧債務を消滅させる意思が認められるかが判断の基準となる。
重要事実
主債務者Dの割賦金債務について、被上告人が連帯保証人となっていた。その後、債権者(上告人)、主債務者D、および第三者Eの三者が会合し、Dが残金の一部について支払期日を定め、Eがその支払債務について新たに保証人となり、残額はDが単独で支払うとする契約書を差し入れた。さらにその後、Dが内金を支払った際、債権者はEの保証を解除した。債権者は、当初の連帯保証人である被上告人に対し、保証債務の履行を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、債権者、主債務者D、新保証人Eの三者が会合し、支払条件の再設定と新たな保証人の選定を行っている。この際、当初の保証人である被上告人を関与させず、DとEが連名で新たな契約書を差し入れている事実は、従前の債権債務関係を解消し、新たな合意に基づく債権債務関係に置き換える意思があったことを推認させる。さらに、その後債権者がEの保証を解除している一連の経過に照らせば、三者間において「当初の債務を消滅させて新債権債務関係を発生させる意思」があったと認められる。したがって、旧債務の一部としての被上告人の保証債務も消滅したと評価される。
結論
被上告人の当初の保証債務は、更改による旧債務の消滅に伴い消滅した。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
更改の成否に関する事実認定の枠組みを示すものである。司法試験においては、保証人の入れ替えや主債務の同一性を超える変更があった場合に、民法513条の更改の成否を検討し、付随的に旧保証債務の消滅を論じる際の論理構成として活用できる。特に当事者の「意思」を客観的事実(契約書の差し入れ態様等)から推認するプロセスが参考になる。
事件番号: 昭和30(オ)496 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張していなかった新たな抗弁を主張することは許されない。また、原審の証拠取捨や事実認定の適否は、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原審において民法513条2項(現行法513条1項)に基づく更改の主張を行っていなかったが、上告審に至って新たにこの更改の成…