判旨
不動産登記法29条(現行法16条等参照)は登記の嘱託に関する手続規定にすぎず、同条を根拠に私法上の権利を取得したり義務を課したりすることはできない。
問題の所在(論点)
不動産登記法29条(現行の嘱託登記規定に相当)を根拠として、私法上の権利を取得し、または相手方に私法上の義務を課すことができるか。また、本件における請求が権利の濫用に該当するか。
規範
不動産登記法上の登記嘱託に関する規定は、官公署が関与する登記手続の形式的処理を定めた手続法上の規定であって、実体法上の権利義務関係を創設するものではない。したがって、同規定を根拠として直接的に私法上の請求権が発生することはない。
重要事実
上告人は、旧不動産登記法29条(官公署が登記権利者又は登記義務者である場合の登記嘱託規定)を根拠として、被上告人に対し何らかの権利取得を主張し、また被上告人が義務を負うべき旨を主張して争った。なお、被上告人による本訴請求が権利の濫用に該当するか否かも争点となったが、具体的な事案の詳細は判決文からは不明である。
あてはめ
不動産登記法29条は、単に登記の嘱託という行政上の事務手続を規定しているにすぎない。そのため、同条の存在をもって直ちに実体法上の権利が発生すると解することはできない。また、記録を精査しても、被上告人の請求が権利の濫用(民法1条3項)にあたると認めるべき特段の事情は認められない。
結論
不動産登記法の嘱託規定は実体法上の権利義務を定めるものではないため、上告人の主張は理由がなく、請求を認容した原判決は正当である。
実務上の射程
登記法上の規定を実体法上の請求権の根拠として援用することを否定した典型例である。司法試験においては、手続法上の規定(不動産登記法や戸籍法等)と実体法(民法)を峻別する視点を示す際に有用であり、特に登記引取請求権などの実体法上の根拠を論じる際の反面教師的な理解として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)800 / 裁判年月日: 昭和30年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借契約の解約申入れにおける正当事由の有無は、賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情等の諸般の事情を総合考慮して判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)が被上告人(賃借人)に対し、本件家屋の賃貸借契約の解約申入れを行った。原審(第一審判決を引用)は、上告人側の事情と…