判旨
市議会が行った決議の無効確認を求める訴えは、裁判所法3条にいう「法律上の争訟」に当たらず、訴訟要件を欠く不適法なものとして却下されるべきである。
問題の所在(論点)
市議会による議決の無効確認を求める訴えが、裁判所法3条にいう「法律上の争訟」に該当し、司法審査の対象となるか。
規範
裁判所が司法権を行使し得る「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に当たるためには、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であり、かつ、それが法令の適用により終局的に解決し得るものであることを要する。議会内部の意思決定や政治的判断に留まる事項は、特別の法的規定がない限り、司法審査の対象とはならない。
重要事実
上告人は、B市議会がなした議決について、その無効確認を求めて出訴した。第一審裁判所は、当該請求が「法律上の争訟」に当たらないこと、および議決の効力を争うことを認めた特別の規定も存在しないことを理由に訴えを却下した。上告人はこれを不服として控訴したが棄却されたため、さらに上告したものである。
あてはめ
本件における市議会の決議無効確認請求は、具体的な権利義務の存否を確定させるための紛争ではなく、議会の意思決定プロセスの当否を問うものに過ぎない。また、本件のような市議会の議決に対して、その効力を直接訴訟で争うことを認めた公職選挙法や地方自治法上の特段の規定(特別の定め)も存在しない。したがって、本件訴えは、純然たる法律上の紛争としての成熟を欠き、司法権による法的な解決に適さない性質のものといえる。
結論
本件訴えは「法律上の争訟」に当たらないため、訴えを却下した原審の判断は正当であり、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(オ)290 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
一 市議会の議決の無効確認を求める訴は原則として不適法である。 二 市議会議員であるというだけでは、市長が建設大臣および知事に対してした建築許可、認可の申請および右申請に基く許可、認可について、無効確認を求める訴の利益を有しない。
地方議会における内部規律や政治的決議の司法審査可能性(部分社会の法理や法律上の争訟性)を論じる際の基礎となる判例である。特段の法的保護利益を侵害する場合や、法令に基づく権利義務関係の存否が直接の争点となっていない限り、議会の判断は尊重され、司法は介入できないという原則を示している。
事件番号: 昭和26(オ)584 / 裁判年月日: 昭和29年2月11日 / 結論: 棄却
村議会の予算議決の無効確認を求める訴は不適法である。
事件番号: 昭和39(行ツ)89 / 裁判年月日: 昭和41年1月13日 / 結論: 棄却
検察審査会の議決に対しては、行政訴訟の提起が許されないと解すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)516 / 裁判年月日: 昭和29年10月14日 / 結論: 棄却
一 選挙の効力に関する訴願で主張されていない事実でも、訴訟で当事者が主張した事実は選挙の効力に関する判決の基礎とすることができる。 二 選挙の効力に関する訴願の審理に際し、裁決庁は訴願人の主張しない事実を職権によつて探知することができる。 三 公職選挙法第二〇九条の二は当選の効力に関する争訟についての規定であつて、選挙…
事件番号: 昭和31(オ)729 / 裁判年月日: 昭和31年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、投票用紙に記載された氏名等が候補者の誰を指すかにつき、客観的な記載内容のみならず証拠に基づき合理的に推認できる場合には、当該投票は有効と解される。 第1 事案の概要:上告人は、本件選挙における特定の係争投票について、その記載内容から候補者を特定できない等の理由…