一 選挙の効力に関する訴願で主張されていない事実でも、訴訟で当事者が主張した事実は選挙の効力に関する判決の基礎とすることができる。 二 選挙の効力に関する訴願の審理に際し、裁決庁は訴願人の主張しない事実を職権によつて探知することができる。 三 公職選挙法第二〇九条の二は当選の効力に関する争訟についての規定であつて、選挙の効力について争訟が提起された場合には適用がない。
一 選挙の効力に関する訴願で主張されていない事実を、選挙の効力に関する判決の基礎とすることの可否 二 選挙の効力に関する訴願裁決庁の職権による事実探知の可否 三 選挙争訟における公職選挙法第二〇九条の二の適用の有無
公職選挙法202条,公職選挙法203条,公職選挙法209条の2
判旨
行政不服申立てにおける審判範囲と訴訟における審理対象は必ずしも同一ではなく、訴願で主張しなかった事実を訴訟で主張・斟酌することは妨げられない。また、選挙管理委員会は職権で事実を探知でき、選挙規定違反が選挙結果に影響を及ぼす虞がある場合は、潜在的無効投票の按分計算によらず選挙無効とすべきである。
問題の所在(論点)
1. 訴願前置主義が適用される場合、訴願で主張しなかった事実を訴訟において主張・斟酌すること(いわゆる理由の追加・差し替えの可否)ができるか。 2. 行政不服審査における職権調査の許容性。 3. 選挙規定違反が認められる場合の、選挙無効(209条)と当選無効(209条の2)の区別。
規範
1. 訴願(不服申立て)は行政権による再審査手続であるのに対し、訴訟は司法権による行政活動の合法性審査であり、両者は続審的段階をなすものではない。そのため、法律に特別の定めがない限り、訴願で主張しなかった事実を訴訟で主張し、裁判所がこれを斟酌することは妨げられない。 2. 行政不服審査においては弁論主義の適用はなく、審査庁は職権で事実を探知し、裁決の基礎とすることができる。 3. 選挙規定違反により選挙結果に異動を及ぼす虞がある場合には、潜在的無効投票の按分計算(公職選挙法209条の2)による当選無効ではなく、選挙の全部又は一部を無効(同法209条)とすべきである。
事件番号: 昭和39(行ツ)16 / 裁判年月日: 昭和39年12月10日 / 結論: 破棄自判
一 市議会議員選挙において、公職選挙法第一七三条および第一七四条(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)の規定による候補者の氏名および党派別掲示に一候補者の所属政党を無所属と誤記した違法は、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいても、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものと解すべきである。 二 選挙訴訟の係…
重要事実
市町村選挙管理委員会の決定に対し、都道府県選挙管理委員会へ訴願が提起され、選挙無効の裁決がなされた。上告人(原告)は、①訴願で申し立てられなかった事実を原審(裁判所)が斟酌した点、②審査庁が職権で事実を探知して裁決した点、③潜在的無効投票として按分計算せず選挙無効とした点に違法があると主張して争った。
あてはめ
1. 訴願は行政庁に是正の機会を与え無益な訴訟を回避する手続に過ぎず、司法審査たる訴訟とは性質を異にする。本件訴訟において当該事実は当事者により主張されているため、原審がこれを判断の基礎としたことに違法はない。 2. 訴願手続は対立弁論による攻撃防御が尽くされる場ではないため、弁論主義は適用されず、審査庁の職権による事実探知は当然に認められる。 3. 本件は選挙規定違反があり選挙結果に影響を及ぼす虞がある「選挙無効の訴え」である。潜在的無効投票の按分計算は選挙自体が適法に行われた場合の手法であり、選挙自体に違法がある本件では、法209条に基づき選挙無効と判断した原審の判断は正当である。
結論
上告棄却。訴願で主張していない事実を訴訟で斟酌すること、及び審査庁の職権調査、選挙規定違反を理由とする選挙無効判決はいずれも適法である。
実務上の射程
行政訴訟における「争点流用」や「理由の差し替え」を考える際の基礎となる判例。特に行政不服手続と取消訴訟の関係が続審ではないことを明示しており、不服申立段階での主張の有無が訴訟での攻撃防御を直ちに制限しないという一般原則を導く際に有用である。選挙訴訟特有の論点(按分か無効か)についても基準を示している。
事件番号: 昭和36(オ)841 / 裁判年月日: 昭和36年11月10日 / 結論: 棄却
候補者の通称を記載した投票にも公職選挙法第六八条の二の適用がある。
事件番号: 昭和31(オ)729 / 裁判年月日: 昭和31年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、投票用紙に記載された氏名等が候補者の誰を指すかにつき、客観的な記載内容のみならず証拠に基づき合理的に推認できる場合には、当該投票は有効と解される。 第1 事案の概要:上告人は、本件選挙における特定の係争投票について、その記載内容から候補者を特定できない等の理由…
事件番号: 昭和35(オ)1467 / 裁判年月日: 昭和36年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定」とは主として選挙の管理執行に関する規定を指し、当選人決定の際の被選挙権の有無の判断に誤りがある場合は、選挙無効の訴えの対象にはならない。 第1 事案の概要:本件選挙において、選挙会は訴外Dに被選挙権がないものと判断し、同人を当選人と定めなかった。上告人は、…