候補者の通称を記載した投票にも公職選挙法第六八条の二の適用がある。
候補者の通称を記載した投票に公職選挙法第六八条の二の適用の有無。
公職選挙法68条の2
判旨
選挙管理委員会が同一の通称を持つ候補者の存在を認識せず注意喚起を行わなかったとしても、直ちに差別的取扱いとは認められない。また、投票の有効性を最大限尊重する公職選挙法の趣旨に照らし、同一氏名等の候補者がいる場合の按分票に関する規定は、通称を記載した投票にも適用される。
問題の所在(論点)
1.選挙管理委員会が特定の候補者にのみ注意喚起を行い、他の同一通称を持つ候補者に注意を行わなかったことが差別的取扱いに該当し、選挙の自由公正を害するか。2.公職選挙法68条の2の按分規定が、通称を記載した投票に対しても適用されるか。
規範
1.選挙管理執行が規定に違反したというためには、必ずしも執行機関の故意・過失を要しないが、客観的事実関係に照らして不当な差別的取扱いが認められる必要がある。2.公職選挙法68条の2(同一氏名等の候補者に対する投票の按分)は、選挙人の投票をなるべく有効にしようとする趣旨に基づくものであるから、通称を記載した投票についても同条を適用すべきである。
重要事実
本件選挙において、「D」という同一屋号を持つ候補者2名に対し、選挙管理委員長は選挙運動に関する注意を促したが、共通の通称「E」で呼ばれていた候補者FおよびGに対しては、開票に至るまでその事実を認識していなかったため、同様の注意を促さなかった。開票の結果、「E」と記載された投票が多数存在し、これらにつき公職選挙法68条の2の準用の是非が争点となった。
事件番号: 昭和31(オ)766 / 裁判年月日: 昭和31年10月26日 / 結論: 棄却
成田延八なる候補者が「○八」、「○」を自己の通称として選挙管理委員会に届出た場合は、「○八」、「八(原文は丸の中に八)」と記載された投票は、同人に対する有効投票と認めるべきである。
あてはめ
1.差別的取扱いの有無について、選挙管理委員会は開票時まで候補者FおよびGがともに「E」と呼称されていることを認識していなかった。事実を認識していない以上、注意を促すこと自体が不可能であったといえる。したがって、注意を行わなかったことが直ちに差別的取扱いに該当するとはいえない。2.按分規定の適用について、同条の趣旨は投票の有効性を最大限確保することにある。通称による投票も有効とされる実務上の扱いに照らせば、同一通称が存在する場合に同条の適用を否定する合理的理由はなく、通称記載の投票にも同条が及ぶと解するのが相当である。
結論
1.本件における選挙管理委員会の対応は差別的取扱いには当たらず、選挙の自由公正を害したとはいえない。2.通称を記載した投票についても、公職選挙法68条の2を適用し按分を行うべきである。
実務上の射程
選挙管理執行の違法性判断において、執行機関の主観的態様(過失等)は必須ではないが、実際の執行過程における認識の有無は差別性の判断に影響する。答案上は、按分規定の類推適用または直接適用の根拠として「投票有効化の趣旨」を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)461 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】部落(地域組織)による候補者の推薦や選挙運動は直ちに違法ではなく、個別の運動に違法があっても、それが公職選挙法205条1項の「選挙の規定」違反として選挙無効の原因になるものではない。 第1 事案の概要:市議会議員選挙において、各地区(部落)の有志や各種団体幹部が協議し、地域の利益擁護を目的に地域別…
事件番号: 昭和39(行ツ)16 / 裁判年月日: 昭和39年12月10日 / 結論: 破棄自判
一 市議会議員選挙において、公職選挙法第一七三条および第一七四条(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)の規定による候補者の氏名および党派別掲示に一候補者の所属政党を無所属と誤記した違法は、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいても、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものと解すべきである。 二 選挙訴訟の係…
事件番号: 昭和28(オ)516 / 裁判年月日: 昭和29年10月14日 / 結論: 棄却
一 選挙の効力に関する訴願で主張されていない事実でも、訴訟で当事者が主張した事実は選挙の効力に関する判決の基礎とすることができる。 二 選挙の効力に関する訴願の審理に際し、裁決庁は訴願人の主張しない事実を職権によつて探知することができる。 三 公職選挙法第二〇九条の二は当選の効力に関する争訟についての規定であつて、選挙…
事件番号: 昭和35(オ)806 / 裁判年月日: 昭和36年9月14日 / 結論: 破棄差戻
一 「ヤナセ」と記載された投票は、候補者長瀬に対する有効投票とは認められない。 二 「柳瀬」「成瀬」と記載された投票は、候補者長瀬に対する有効投票とは認められない。 三 「長井」「ナガイ」「ながい」と記載された投票は、候補者長瀬に対する有効投票とは認められない。