判旨
賃貸借契約において、契約解除の効力を制限する法理として、形式的な解除権の行使が信義誠実の原則に反し、権利の濫用(民法1条2項、3項)として認められない場合があることを示した。
問題の所在(論点)
賃貸借契約の解除権行使が、民法1条3項の権利濫用として制限されるための要件および判断枠組みが問題となる。
規範
賃貸借のような継続的契約関係においては、当事者間の信頼関係が基礎となっている。そのため、賃借人に債務不履行等の解除事由が存在する場合であっても、背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときには、解除権の行使は信義則に反し、権利の濫用としてその効力が制限される。
重要事実
上告人(賃貸人)は、被上告人(賃借人)との間の賃貸借契約につき、何らかの理由(詳細は判決文からは不明)に基づき解除を主張した。これに対し、本件賃貸借が一時的なバラック建築を目的とした臨時的なものであるとの主張が上告人からなされたが、原審はそのような事実は認めず、諸般の事情に照らして解除権の行使を濫用と判断した。
あてはめ
原審が認定した事実関係(具体的な事実は判決文からは不明)に基づけば、被上告人側に契約解除を正当化するほどの背信性は認められず、一方で上告人の解除主張は賃借人の生存や利用権を不当に害するものといえる。したがって、形式的な解除要件を備えていたとしても、その行使を是認することは信義則に照らして相当ではないと判断される。
結論
本件賃貸借契約の解除は権利の濫用にあたり、無効である。よって、上告を棄却する。
実務上の射程
信頼関係破壊の法理の先駆けとなった判例の一つ。答案上は、賃借人の債務不履行がある場合に、民法541条等の形式的要件を充足してもなお、信義則(1条2項)や権利濫用(1条3項)を根拠に解除を拒む際の規範として活用する。特に、賃借人に有利な「特段の事情」を摘示する際の理論的支柱となる。
事件番号: 昭和29(オ)72 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が形式上は正当なものであっても、具体的諸事情の下で社会観念上、権利の濫用(民法1条3項)と認められる場合には、その行使は許されない。本件では原審の認定に基づき、被上告人の請求が権利の濫用に当たらないとした判断が支持された。 第1 事案の概要:本件判決文の記述からは具体的な事案の詳細は不明…
事件番号: 昭和29(オ)966 / 裁判年月日: 昭和31年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権に基づく妨害排除請求権が成立し得る場合であっても、個別の具体的事実関係に照らし、その権利行使が正当な利益を欠き、相手方に不当な不利益を与える場合には、民法1条3項により権利の濫用として許されない。 第1 事案の概要:本件では、上告人が主張する賃借権に基づき、目的物の占有を妨げている者に対して…