判旨
控訴審において請求の減縮(一部取下げ)がなされた場合、当該部分は初めから係属しなかったものとみなされ、一審判決の当該部分は当然に失効する。したがって、控訴審は残余の部分についてのみ審理し、一審判決を維持する場合には控訴を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
控訴審における請求の減縮があった場合に、第一審判決のうち減縮された部分の効力はどうなるか。また、控訴審はどのような判決を下すべきか。
規範
控訴審において請求の減縮が行われた場合、その部分は訴えの一部取下げ(民事訴訟法261条1項)に該当し、当該請求部分は初めから裁判所に係属しなかったものとみなされる(同262条1項)。これに伴い、減縮された部分に係る第一審判決は当然にその効力を失う。控訴審の審判対象は減縮後の残余の部分に限定され、当該部分について第一審判決を変更する理由がないときは、控訴を棄却すべきである。
重要事実
被上告人(原告)は、第一審において家屋明渡しおよび損害金の支払を請求し、いずれも認容する判決を得た。これに対し上告人(被告)が控訴したが、控訴審において被上告人は損害金の請求を全部撤回すると陳述し、上告人もこれに異議がない旨を述べた。原審(控訴審)は、家屋明渡しの請求についてのみ審理を行い、第一審判決を相当として控訴を棄却した。上告人は、原判決には請求していない損害金の支払を命じた違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被上告人が控訴審で損害金請求を撤回し、上告人が異議を述べなかった事実は、訴えの一部取下げである「請求の減縮」にあたる。この陳述により、第一審判決のうち損害金請求を認容した部分は当然に失効したといえる。その結果、本件の控訴審における審判対象は残余の家屋明渡請求のみに限定される。原審がこの残余部分についてのみ審理し、第一審判決を維持する趣旨で控訴棄却の判決をしたことは、失効した損害金部分について重ねて命じたものではなく、適法であると解される。
結論
控訴審での請求の減縮により、一審判決の当該部分は当然に失効する。原審が残余の部分についてのみ審理し控訴を棄却したことに違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
訴えの変更(減縮)に伴う一審判決の失効という当然の理を示したものである。答案上は、控訴審での訴えの変更(交換的変更等)があった際に、一審判決の効力がどうなるか、審判対象がどのように特定されるかを説明する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)343 / 裁判年月日: 昭和42年8月1日 / 結論: 棄却
控訴審において請求の一部が減縮された場合に、残余の部分につき第一審判決を変更する理由がないときは、控訴棄却の判決をすれば足りるものと解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)358 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において訴えの取下げがあった場合、その部分に関する第一審判決は当然に失効するため、控訴審は残余の部分についてのみ審理・判断を行えば足りる。 第1 事案の概要:上告会社(被告)に対し、金員支払の請求および土地明渡の請求がなされていた事案。控訴審(原審)において、金員支払請求の全部および土地明渡…