請求の一部につき控訴審において請求の減縮をしたときは、その部分については初めより係属しなかつたものと看做され、この部分に対する第一審の判決はおのずからその効力を失い、控訴は残余の部分に対するものとなるから、この部分につき第一審判決を変更する理由がないときは控訴棄却の判決をすべきである。
控訴審において請求の一部が減縮された場合における控訴判決の主文
民訴法232条,民訴法186条,民訴法384条1項
判旨
控訴審において請求を減縮した場合、その部分は初めから係属しなかったものとみなされ、対応する第一審判決はその効力を失う。そのため、裁判所が減縮後の残余部分について第一審判決を維持する場合、主文で控訴棄却の判決をしても、処分権主義に反する違法はない。
問題の所在(論点)
控訴審における請求の減縮があった場合に、裁判所が「控訴棄却」の判決をすることで減縮後の部分のみを維持できるか。減縮された部分の第一審判決の効力および処分権主義(民事訴訟法246条参照)との関係が問題となる。
規範
控訴審において原告が請求の一部を減縮(訴の一部取下げまたは請求の一部放棄)した場合、その部分は当初から係属しなかったものと看做される。その結果、減縮された部分に係る第一審判決は当然にその効力を失い、控訴審の審判対象は減縮後の残余の部分に限定される。したがって、第一審判決が減縮後の請求範囲において正当であると認める場合には、控訴棄却の判決をすれば足りる。
重要事実
第一審判決は、被告に対し昭和21年3月2日以降の家屋明渡までの金員支払を命じた。これに対し被告が控訴したところ、原告は控訴審の口頭弁論において、請求の始期を昭和22年5月1日以降へと「減縮」した。原審は、この減縮を前提として控訴を棄却する判決を言い渡した。これに対し被告(上告人)は、控訴棄却によって第一審判決がそのまま維持されることになり、減縮したはずの期間分(昭和21年3月2日から昭和22年4月30日まで)の支払義務も残るため、申立てのない事項について判決をした違法(処分権主義違反等)があると主張して上告した。
あてはめ
原告が控訴審で請求を昭和22年5月1日以降分に減縮した以上、それ以前の期間分については訴訟係属が遡及的に消滅する。これに伴い、当該期間分の支払を命じた第一審判決の部分は、特段の取消しを待たずしておのずから失効する。したがって、控訴審が「控訴を棄却する」との主文を言い渡しても、それは効力を失わずに残っている「昭和22年5月1日以降」の部分について第一審判決の内容を維持することを意味するに過ぎない。以上から、減縮により消滅した部分についてまで判決をしたことにはならない。
結論
原判決に処分権主義違反の違法はなく、控訴審において請求を減縮した上で控訴を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
控訴審における請求の減縮(一部取下げ等)の法的性質とその反射的効果としての第一審判決の失効について判示したものである。答案上は、一部取下げによって審判対象が限定され、第一審判決のうち取り下げられた部分が当然に失効することを確認する際の根拠として用いる。処分権主義との関係で、主文が「控訴棄却」であっても減縮後の範囲で確定することを説明する材料となる。
事件番号: 昭和29(オ)861 / 裁判年月日: 昭和31年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において請求の減縮(一部取下げ)がなされた場合、当該部分は初めから係属しなかったものとみなされ、一審判決の当該部分は当然に失効する。したがって、控訴審は残余の部分についてのみ審理し、一審判決を維持する場合には控訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、第一審において家屋明…