判旨
裁判所が特定の事実を認定するに当たり、当事者が提出した証拠が唯一の証拠方法でない限り、その証拠を排斥して反対事実を認定しても理由不備の違法とはならない。
問題の所在(論点)
当事者が主張する事実を裏付けるための証拠を排斥し、反対の事実を認定した判決に、民事訴訟法上の理由不備(理由の食い違い)の違法が認められるか。
規範
判決に理由不備があるといえるためには、判決の結論に影響を及ぼす重要な主張や証拠の取捨選択について、論理的一貫性を欠くか、あるいは必要な判断が欠落していることが必要である。証拠の評価については裁判所の専権に属し、特定の証拠を採用せずとも他の証拠に基づき合理的判断が示されていれば、特段の事情がない限り違法とはならない。
重要事実
上告人は、係争家屋の所有権が自身に帰属すると主張し、その根拠として証人Dおよび証人Eの証言を証拠として提出した。しかし、原審はこれらの証人による証拠方法を唯一のものとは認めず、他の証拠を総合して上告人の主張事実を否定し、反対の事実を認定した。これに対し上告人は、原判決には理由不備の違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、上告人が提出した証人DおよびEの証言は、所有権帰属を立証するための唯一の証拠方法とはいえない。原審は、上告人の主張を認めるに足りる証左はないと判断した一方で、原判決が掲げる他の証拠群によれば、原審が認定した事実は十分に認められる。したがって、原審の判示は上告人の主張を排斥する趣旨として論理的に完結しており、判断の過程に不備はないといえる。
結論
原判決に理由不備の違法はなく、上告人の主張は採用できない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
事実認定における自由心証主義の限界と理由不備の成否を画する事例である。答案上は、裁判所が特定の証拠を採用しなかったとしても、判決文全体から反対主張を排斥する趣旨が読み取れ、かつ認定に合理性があれば、理由不備を問うことは困難であるという文脈で使用する。
事件番号: 昭和31(オ)789 / 裁判年月日: 昭和33年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定において一部に違法があったとしても、それが主要事実に影響を及ぼさず判決の結論を左右しない場合には、判決に影響を及ぼすべき違法とはいえない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の事実認定に証拠に基づかない誤りがあると主張して上告した。具体的には、上告人が判示移築のために宅地を訴外Dに賃貸するよ…