判旨
所有権に基づく建物明渡請求において、原告が自己の所有権と被告の不法占有を主張している場合、判決においてこれらを認める理由を判示すれば足り、特定の契約に関する主張等に対し詳細な判示を欠いても理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
所有権に基づく建物明渡請求において、請求原因事実(所有および占有)の認定が示されている場合、当事者が主張する特定の契約関係の履行等について詳細な判断を示さないことは、理由不備の違法にあたるか。
規範
所有権に基づく物権的請求権(返還請求権)の要件は、①原告が目的物を所有していること、及び②被告が目的物を占有していることである。裁判所がこれらの要件の充足を認める以上、それ以外の派生的な主張や証拠(契約関係等)について詳細に言及しなくとも、判決に理由不備の違法(旧民訴法401条、現行312条2項6号参照)は存しない。
重要事実
被上告人(原告)は、本件係争家屋を自ら建築し所有していると主張し、上告人(被告)が何ら権限なくこれを占有使用しているとして、所有権に基づき建物の明渡を求めた。これに対し上告人は、証拠(甲第1号証)として提出された契約に関する主張への判断が示されていないこと等を理由に、原判決には理由不備の違法があると主張して上告した。
あてはめ
被上告人の請求原因は「所有権に基づく明渡請求」であり、特定の契約(甲第1号証)の履行を求めるものではない。原判決が被上告人の所有権と上告人の占有を認め、その請求を認容する理由を判示している以上、法律上の要件は満たされている。したがって、論旨が指摘する契約に関する各主張について、個別に摘示や判断を示さなかったとしても、判決の結論を導く論理に欠けるところはない。
結論
原判決に理由不備の違法はなく、所有権に基づく明渡請求を認容した判断は正当であるとして、上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟法上の理由不備の要否を判断した事例。請求の法的根拠(訴訟物)を特定し、その要件事実が認定されている限り、関連するが直接の要件ではない事実関係について判示を省略しても違法とはならない。答案上は、理由不備を主張する際の反論、あるいは判決書の記載事項の限定を示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)625 / 裁判年月日: 昭和30年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決において、当事者が主張した事実が主要な請求の原因そのものではなく、その存否を基礎づける事情(間接事実)に過ぎない場合には、裁判所が当該事実の存否について個別に判断を示す必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争家屋についての賃借権を有することを主張し、その具体的な事情として、当該家屋の…