判旨
憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原審の事実認定を非難するにすぎない場合は、民事訴訟法上の適法な上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
憲法違反を名目とする上告理由が、実質的に原審の事実認定を争うものである場合、民事訴訟法(旧法394条)上の適法な上告理由として認められるか。
規範
上告審において憲法違反を主張する場合であっても、その実質が下級審による事実認定の不当性を争うものであるときは、民事訴訟法第312条(旧394条)に規定する適法な上告理由としての要件を欠く。
重要事実
上告人は、原判決(原審の判断)に憲法違反がある旨を主張して上告を提起した。しかし、その主張の具体的な内容は、原審が確定した事実関係の誤りや不当性を指摘するものであった。
あてはめ
上告人の主張は、形式的には違憲をいうものの、その実質的な内容は原審の事実認定を非難することに帰着している。これは、法律審である上告審において判断の対象となる憲法違反の問題ではなく、事実認定の当不当を争うものといわざるを得ない。したがって、民事訴訟法第394条(当時)が定める上告理由の主張としては認められない。
結論
本件上告は適法な上告理由を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
民事訴訟における上告理由の限定性を示す。単に「憲法違反」という語句を用いても、内容が事実誤認の主張であれば門前払い(または本案棄却)されることを示しており、上告理由書の作成実務において事実関係の争いと憲法上の問題を峻別すべき指針となる。
事件番号: 昭和34(オ)1112 / 裁判年月日: 昭和35年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決において、間接事実や単なる証拠抗弁にすぎない事項については、これに対し格別の判断を示さなくとも判決に理由不備の違法は存しない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の判断に対し、特定の事項について判断が示されていないとして理由不備または理由食い違いの違法を主張し、上告を申し立てた。しかし、上告人が…