判旨
判決において、間接事実や単なる証拠抗弁にすぎない事項については、これに対し格別の判断を示さなくとも判決に理由不備の違法は存しない。
問題の所在(論点)
裁判所が判決を下す際、当事者が主張したすべての事項(特に間接事実や証拠抗弁)について、判決書の中で個別に判断を示す必要があるか。民事訴訟法上の「理由不備」の有無が問題となる。
規範
判決書に記載すべき「理由」とは、判決の主文を導き出すために必要な事実認定および法解釈のプロセスを指す。直接の主要事実に直結しない「間接事実」や、証拠の証明力を争う「証拠抗弁」については、これらに対する個別の判断を判決書に詳細に記載する必要はない。
重要事実
上告人は、原審の判断に対し、特定の事項について判断が示されていないとして理由不備または理由食い違いの違法を主張し、上告を申し立てた。しかし、上告人が指摘する事項は、いずれも主要事実を推認させるための間接事実にすぎないか、あるいは証拠の取捨選択に関する証拠抗弁にとどまるものであった。
あてはめ
本件で上告人が指摘した事項は、いずれも単なる証拠抗弁または間接事実にすぎない。裁判所は主要事実の存否について判断を示せば足り、それを推認させるにすぎない間接事実や証拠の評価について逐一判断を示す義務はない。したがって、これらの事項について格別の判断をしなかった原判決の判断過程に、上告理由とされるような違法は認められない。
結論
間接事実や証拠抗弁について個別の判断を示さなくても、判決に理由不備の違法は認められないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟における判決書の理由記載の程度を画したものである。主要事実(要件事実)に対する判断が明示されている限り、間接事実の成否や証拠の信用性評価について不満があっても、それを理由不備(民訴法312条2項6号等)として上告することは困難であることを示唆している。
事件番号: 昭和29(オ)845 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原審の事実認定を非難するにすぎない場合は、民事訴訟法上の適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決(原審の判断)に憲法違反がある旨を主張して上告を提起した。しかし、その主張の具体的な内容は、原審が確定した事実関係の誤りや不当性を指摘…