判旨
手形振出の原因関係を欠く旨の抗弁が主張された場合、裁判所が当該事由を認めない一方で、反対に原因関係が肯定されるとの事実認定をすることは、適法な証拠の取捨選択の範囲内である。
問題の所在(論点)
手形訴訟において、被告が主張する原因関係の欠如という抗弁に対し、裁判所が証拠の取捨選択により原因関係の存在を認定して抗弁を排斥することの適法性。
規範
原因関係の欠如という抗弁事実の有無の判断において、裁判所は挙示された証拠を総合的に評価し、自由な心証に基づき証拠の取捨選択および事実認定を行うことができる。
重要事実
手形金の支払を求める訴訟において、被告(上告人)は原因関係を欠く旨の抗弁を主張した。これに対し原審は、被告が主張する抗弁事実に合致する証拠を信用せず、他に認めるに足りる証拠はないとした。一方で、原告(被上告人)が主張するような原因関係が存在することを証拠に基づいて認定し、被告の抗弁を排斥した。
あてはめ
原判決は、被告が主張する原因関係を欠く旨の抗弁に対し、その根拠となる証拠を信用できないとして排斥している。さらに、提出された証拠によれば、被告の主張とは反対に、被告が否定する原因関係がむしろ肯定されると判断した。このような判断は、証拠関係に照らして不合理ではなく、裁判所の適法な事実認定の権限に属するものである。
結論
被告による原因関係を欠く旨の抗弁は採用できず、原審の判断に法令違背はない。
実務上の射程
手形抗弁(原因関係の不存在等)における立証責任の所在や、裁判所による自由心証に基づく事実認定のプロセスを示す例として機能する。司法試験等では、抗弁の成否を論証する際に、証拠の評価と事実認定の合理性を論述する前提として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)705 / 裁判年月日: 昭和42年5月23日 / 結論: 破棄差戻
原審が成立を認めた甲第八号証には、車輛二台の売り渡し期日は昭和三六年五月八日、その代金は一台につき七八、〇〇〇円との記載があり、同じく成立を認めた甲第一三号証には、同年三月一五日被上告人が上告人に対し右二台と別の三代の車輛代金として五九、〇〇〇円等を交付した旨記載されているのに、その記載が真実に反することについて首肯す…