判旨
行政処分に手続上の瑕疵があったとしても、その瑕疵が当然に当該処分を無効とするものではない。不許可処分において所定の手続を経由しなかったとしても、直ちに当然無効とは解されない。
問題の所在(論点)
行政処分の成立過程において、法令が定める諮問や決議等の手続を欠いた瑕疵がある場合、当該処分は当然無効となるか。また、農地調整法に基づく不許可処分における手続瑕疵の重大性が問題となった。
規範
行政処分に手続上の瑕疵が存在する場合であっても、その瑕疵の程度が重大かつ明白であり、処分の法的効力を否定すべき例外的な事情がない限り、当該処分は直ちに当然無効となるものではない。手続規定の趣旨に照らし、手続の不備が処分の実質的判断に決定的な影響を及ぼすものでない限り、その効力は維持される。
重要事実
本件土地の買収処分の前提となる賃貸借解約不許可処分において、県知事が町農地委員会の決議を無視、あるいはその決議を経ることなく処分を行った。上告人は、この手続上の違法を理由に、農地買収処分が自作農を小作農と誤認してなされたものであり、法律上当然無効であると主張して争った。
あてはめ
農地調整法9条3項の解約許可において、県知事が所定の手続(町農地委員会の決議等)を経由すべきことは定められている。しかし、仮に県知事がこれらの手続を無視または欠いて処分を行ったとしても、そのことのみをもって不許可処分が直ちに当然無効になるとは解されない。本件では、手続上の瑕疵が処分の内容を根本的に損なうほど重大であるとは認められず、処分の公定力を否定すべき無効事由には当たらないと判断される。
結論
県知事による不許可処分に手続上の瑕疵があったとしても、直ちに当然無効とはならず、本件買収処分を無効とする上告人の主張は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…
行政手続の瑕疵と無効の関係を示す。司法試験においては、行政手続法違反や個別法の諮問手続欠如が「取消事由」にとどまるか「無効事由」に至るかを論じる際の、無効判断の厳格性を示す判例として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)129 / 裁判年月日: 昭和32年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法等の前身である農地調整法の下において、農地の売買や贈与等を行う際の知事の許可は、当該取引の効力発生要件である。 第1 事案の概要:上告人とDとの間において、農地の売買に関する合意がなされたとされる事案。当該農地の移転について、農地調整法4条3項(改正後は5項)に基づく知事の許可が必要とされる…
事件番号: 昭和27(オ)639 / 裁判年月日: 昭和29年10月8日 / 結論: 棄却
村農地委員会が、はじめ売渡の相手方を甲と定めた農地売渡計画を樹立し、公告縦覧の手続を践み、県農地委員会の承認を受けた後、売渡の相手方を乙に変更する旨の議決をなしてその旨甲および乙に通知し、次いで知事から乙に対し売渡通知書を交付した場合においては、乙に対する農地の売渡処分は当然無効と認むべきである。
事件番号: 昭和28(オ)657 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄差戻
登記簿上の所有者を所有者としてした農地買収処分は、真の所有者がこれを知りまたは知り得べき状態にあつたにかからず、不服申立の方法を採らなかつた場合は、当然には無効ではない。
事件番号: 昭和30(オ)920 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大であるだけでなく、かつ客観的に明白であることを要する。本件買収処分については、瑕疵が重大であっても明白とは認められないため、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁が本件農地の買収処分を行った。しかし、当該処分…