村農地委員会が、はじめ売渡の相手方を甲と定めた農地売渡計画を樹立し、公告縦覧の手続を践み、県農地委員会の承認を受けた後、売渡の相手方を乙に変更する旨の議決をなしてその旨甲および乙に通知し、次いで知事から乙に対し売渡通知書を交付した場合においては、乙に対する農地の売渡処分は当然無効と認むべきである。
自作農創設特別措置法に基く農地の売渡処分を当然無効と認むべき一事例。
自作農創設特別措置法8条,自作農創設特別措置法16条1項,自作農創設特別措置法18条,自作農創設特別措置法20条
判旨
行政処分が当然無効である場合には、たとえ代金の納付や所有権移転登記が完了していたとしても、当該処分による権利取得の効力は生じない。
問題の所在(論点)
行政処分(農地の売渡処分)が当然無効である場合に、代金の支払や登記の完了といった事実関係があっても、当該処分に基づく権利取得の効力が否定されるか。
規範
行政処分が客観的に重大かつ明白な瑕疵を有し、当然無効と解される場合には、その処分を前提とした私法上の法律関係(売買代金の支払や登記等)が形成されたとしても、当該処分に基づく権利移転の効力は発生しない。
重要事実
上告人Aに対し、農地法等に基づくと推測される農地の売渡処分がなされた。Aは当該処分に基づき、売買代金を納付し、かつ所有権取得の登記を完了した。しかし、原審において当該売渡処分自体が「当然無効」であると判断されたため、その所有権取得の成否が争われた。
事件番号: 昭和29(オ)829 / 裁判年月日: 昭和30年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に手続上の瑕疵があったとしても、その瑕疵が当然に当該処分を無効とするものではない。不許可処分において所定の手続を経由しなかったとしても、直ちに当然無効とは解されない。 第1 事案の概要:本件土地の買収処分の前提となる賃貸借解約不許可処分において、県知事が町農地委員会の決議を無視、あるいはそ…
あてはめ
本件における農地の売渡処分は、原審の認定した事実関係に照らせば当然無効である。当然無効な処分は法律上の効力を全く有しないため、たとえAが売買代金を納付し、不動産登記法上の公示(登記)を備えたとしても、無効な処分が有効になることはない。したがって、Aが当該農地の所有権を取得したと認める余地はない。
結論
売渡処分が当然無効である以上、代金納付や登記があっても所有権は取得できない。上告棄却。
実務上の射程
行政処分の無効と私法上の効果に関する基本的な判示である。答案上は、公定力の及ばない「当然無効」な処分の効果を論じる際、登記等の外形的事実があっても権利移転を否定する根拠として活用できる。ただし、本判決文自体に無効判断の具体的基準は示されていないため、別途「重大明白説」等の基準と併せて論じる必要がある。
事件番号: 昭和28(オ)1007 / 裁判年月日: 昭和31年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合でも、その瑕疵が重大かつ明白でない限り、処分は当然無効とはならず、出訴期間経過後はその効力を争うことができない。住所地の判定が困難な状況下で行われた不在地主としての農地買収処分は、事後的に在村地主と判明しても当然無効には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特…
事件番号: 昭和29(オ)739 / 裁判年月日: 昭和31年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧会計規則85条(現在の会計法に相当)は、国が契約を締結する際、契約書の作成を契約の成立要件(要式性)として定めたものではない。 第1 事案の概要:上告人と国との間で土地の接収・利用等に関する契約上の争いが生じた。上告人は、契約書の作成がなされていないことを根拠に、旧会計規則85条に照らして契約の…
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…
事件番号: 昭和29(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地買収処分において、真実の所有者でない登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、違法ではあるが当然無効とはならず、取消訴訟の対象となるにすぎない。 第1 事案の概要:所有者BがDに対し本件農地を売却し、Dが有効に所有権を取得した。しかし、登記簿上の名義人は依然としてBのままであった。国は、自…