判旨
売買契約において代金支払債務が履行されたにもかかわらず、売主が所有権移転登記義務を履行しない場合、買主は売主に対し、当該義務の履行(登記手続)を求めることができる。
問題の所在(論点)
売買契約に基づく代金支払が完了している場合において、買主が売主に対して所有権移転登記手続を請求できるか。具体的には、代金支払という反対給付が完了した事実に基づく登記請求の可否が問題となる。
規範
不動産の売買契約が締結され、買主が代金支払債務を完済した場合には、特段の事情がない限り、売主は買主に対し、対価関係にある所有権移転登記手続をなすべき義務を負う。
重要事実
上告人(売主)と被上告人(買主)は、昭和23年10月11日、本件建物について代金100万円とする売買契約を締結した。契約の内容は、内金50万円を契約と同時に、残金50万円を同年11月1日の所有権移転登記と同時に支払うというものであった。買主は契約当日に50万円を支払い、残金についても昭和24年2月6日までに完済した。しかし、売主は本件建物の所有権移転登記手続を行わなかったため、買主がその履行を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、当事者間に本件建物の売買契約が成立した事実に争いはない。また、買主は契約に基づく内金50万円のみならず、当初の期限よりは遅れたものの昭和24年2月6日までに残金全額を支払っている。したがって、買主の代金支払義務は履行されており、売主が負う「代金支払と引き換えに登記を移転する」という債務のうち、対価となる給付は完了したといえる。それにもかかわらず売主が登記を移転していない以上、売主には登記義務の履行を強制されるべき理由がある。
結論
被上告人(買主)の請求を容認し、上告人(売主)に本件建物の所有権移転登記手続を命じた原判決は正当である。
事件番号: 昭和27(オ)893 / 裁判年月日: 昭和29年7月27日 / 結論: 棄却
双方の給付が同時履行の関係にある場合反対給付の提供をしないでした催告にもとづく契約解除は効力を生じない。
実務上の射程
本判決は、売買契約における基本原則を確認したものである。司法試験の答案上は、登記請求権の発生原因(物権的請求権または債権的請求権)を論じる際の基礎となる事実関係の整理として利用できる。特に、同時履行の抗辯(民法533条)が代金完済によって消滅し、登記請求が完全に有効であることを示す文脈で機能する。
事件番号: 昭和30(オ)869 / 裁判年月日: 昭和35年1月22日 / 結論: 棄却
乙名義で不動産を競落した甲から所有権を取得した丙は、乙に対して移転登記の請求をすることができる。
事件番号: 昭和31(オ)678 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において代金支払債務を所有権移転登記手続に先行させる旨の特約がある場合には、両債務間に同時履行の関係は成立せず、特約に従った履行遅滞による解除権の行使も信義則に反しない。 第1 事案の概要:被上告人(売主)と上告人(買主)との間の不動産売買契約において、代金債務の履行期を所有権移転登記手続…
事件番号: 昭和24(オ)113 / 裁判年月日: 昭和26年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同時履行の関係に立つ債務において、相手方を履行遅滞に陥らせて契約を解除するには、自己の債務の履行を提供した上で催告することを要し、履行の提供を伴わない解除は効力を有しない。 第1 事案の概要:不動産の売主(上告人)と買主(被上告人)との間で本件売買契約が締結された。本件契約において、買主の残代金支…