判旨
他人名義の答弁書を作成する行為は訴訟行為に該当せず、その作成者は訴訟代理人ではない。また、作成された答弁書を裁判所に提出する行為は、使者として行うことが可能である。
問題の所在(論点)
他人の依頼により他人名義で答弁書を作成・提出する行為が訴訟行為に該当し、その行為者が訴訟代理人として扱われるべきか(弁護士法72条等の代理人原則との抵触可能性を含む問題の所在)。
規範
訴訟行為とは、訴訟手続を進行させ、またはこれに影響を及ぼす法律上の効果を生じさせる行為を指す。他人の依頼により他人名義で答弁書を作成する行為自体は、事実上の補助にすぎず、訴訟上の権利義務を直接変動させる訴訟行為には該当しない。したがって、その作成者は訴訟代理人とはならず、作成された書面の提出行為についても、本人の意思を伝達する使者として行うことが許容される。
重要事実
上告人の委任を受けた訴外Dが、上告人名義の答弁書を作成し、これを裁判所に提出した。上告人は、Dが答弁書を作成・提出したことをもって、裁判所がDを上告人の訴訟代理人と認定したものであると主張して、その適法性を争い上告した。
あてはめ
本件において、Dが行ったのは「上告人の委任を受け」「上告人名義で」答弁書を作成する行為である。これは本人の表示を代行する書面作成の補助に留まり、D自身の意思表示によって訴訟上の効果を発生させる訴訟行為とはいえない。また、当該書面を裁判所に持参・提出する行為も、単なる機械的な伝達を行う「使者」としての性質を有するに過ぎない。したがって、Dの行為を訴訟代理人による行為と解する必要はない。
結論
他人のために答弁書を作成し、これを使者として提出することは適法であり、その作成者を訴訟代理人と認める必要はないため、上告は棄却される。
実務上の射程
本人訴訟において家族や知人が書面作成を補助したり、書面を窓口に持参したりする行為が、直ちに無資格者による禁止された代理行為に当たらないことを示す射程を有する。ただし、実質的に訴訟を主導・支配している場合には弁護士法違反等の問題が生じ得るため、あくまで形式的な書面作成・提出の補助に限定される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和29(オ)63 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人が、その権限の範囲内において、本人に代わって第三者を直接の代理人として選任することは、復代理人選任に関する民法104条の要件を欠く場合であっても、当該代理人にその権限が認められる限り有効である。 第1 事案の概要:上告会社(本人)の社員Dは、その担当業務として段ボール紙の買入れを行っていた。…