判旨
公職選挙法及び地方自治法上の「住所」とは、生活の本拠すなわちその者の生活に最も密接な関係を有する場所を指し、客観的な居住の実態や生活関係の諸事情を総合して判断される。
問題の所在(論点)
被上告人が徳山市内に家屋を有し妻子を居住させている場合において、a村における居住の実態や生活関連事項に基づき、a村を公職選挙法・地方自治法上の「住所」と認めることができるか。
規範
公職選挙法及び地方自治法における「住所」とは、民法上の住所(民法22条)と同義であり、各人の生活の本拠、すなわちその者の生活に最も密接な関係を有する場所をいう。その判断にあたっては、単なる滞在の事実のみならず、起居の状況、職業の内容、資産の所在、納税の有無、住民登録の状況、及び家族の居住状況等の諸客観的事実を総合的に考慮して決すべきである。
重要事実
被上告人はa村内の自宅を使用して起居し、村内の金融機関出張所長を務め、相当の不動産を所有して自作農も行っていた。また、村内での納税や夫役日当の負担を継続し、住民登録もa村に維持していた。一方で、被上告人は徳山市内に家屋を購入して妻子を住まわせ、自身も徳山市に滞在する日数の方が多かったが、これは子の就職や教育を目的としたものであった。
あてはめ
被上告人がa村の自宅で起居し、同村で職業に従事し、不動産を所有して農業を営み、納税等の公的義務を履行している事実は、a村との間に密接な生活関係があることを強く推認させる。他方、妻子が徳山市に居住し、被上告人自身の滞在日数が同市の方が多いとしても、それが子の教育等の便宜のためであるならば、直ちに生活の本拠が徳山市に移転したとはいえない。過去の役職等の経歴を除外しても、現時点における客観的な生活実態に基づけば、a村を生活の本拠と認定することは可能である。
結論
被上告人の住所は依然としてa村内にあったと認められ、選挙当時の被上告人の被選挙権等を基礎付ける住所要件を充たす。
事件番号: 昭和36(オ)10 / 裁判年月日: 昭和36年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の「住所」の認定において、客観的な事実関係により生活の本拠が当該地にないことが明らかに判定できる場合には、本人の主観的意欲を考慮する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、a村に住所を有することを前提に選挙権や被選挙権(公職選挙法9条、10条)を主張したが、原審において客観的な生活実…
実務上の射程
選挙権や被選挙権の帰属を決定する「住所」の認定手法を明示した。滞在日数の長短や家族の居住地といった一要素に拘泥せず、職業、資産、公租公課の負担等の多角的な事実を総合考慮する実務の指針となる。
事件番号: 昭和31(オ)734 / 裁判年月日: 昭和31年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の自書式投票において、候補者の氏名の一部に誤記がある場合であっても、全候補者の氏名との照合により特定の候補者に対する投票の意思が客観的に認められるときは、当該投票は有効である。 第1 事案の概要:本件選挙において、ある投票用紙に記載された氏名の「氏」は「D」であり、「名」の二字のうち一…
事件番号: 昭和28(オ)1039 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
議員候補者の現存する父の氏名を記載した投票であつても、その名が代々襲名され、父は永年病弱で社会的活動を行わず、その候補者は父の名で区長及び農家組合長の職務を行い、父の名は実際上その家の当主である右候補者を指称するものとして取り扱われて来、部落区長の選挙でも父の名を記載した投票は右候補者に対する投票として取り扱われていた…
事件番号: 昭和27(オ)1065 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙権の要件たる「住所」の移転について、生活の実態に基づいて判断すべきであり、特定の選挙期日までに旧住所地から新住所地へ拠点を移した事実が認められる場合には、住所の移転が認められる。 第1 事案の概要:岐阜県議会議員選挙において、原審参加人Cの選挙権の有無が争点となった。Cは昭和26年4月30日の…
事件番号: 昭和29(オ)412 / 裁判年月日: 昭和29年10月20日 / 結論: 棄却
一 およそ法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合、反対の解釈をなすべき特段の事由のない限り、その住所とは各人の生活の本拠を指すものと解するを相当とする。 二 大学の学生が大学附属の寄宿舎で起臥し、実家からの距離が遠く通学が不可能ないし困難なため、多数の応募学生のうちから厳選のうえ入寮を許され、最も長期…