判旨
選挙権の要件たる「住所」の移転について、生活の実態に基づいて判断すべきであり、特定の選挙期日までに旧住所地から新住所地へ拠点を移した事実が認められる場合には、住所の移転が認められる。
問題の所在(論点)
公職選挙法(当時の地方自治法等を含む)における選挙権の行使要件たる「住所」の移転が認められるか否か。特に、特定の選挙期日までに生活の本拠が移動したと評価できるかどうかが問題となった。
規範
「住所」とは、人の生活の本拠、すなわちその者の生活の中心となる場所を指す。選挙法上の住所の認定においては、客観的な居住の事実、及び居住する意思(主観的要素)を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
岐阜県議会議員選挙において、原審参加人Cの選挙権の有無が争点となった。Cは昭和26年4月30日の選挙期日までに、土岐郡a町から多治見市へと拠点を移していた。上告人は、Cは住所を移転したものではないと主張して詳細な論陣を張ったが、原審は事実認定に基づき移転を肯定した。
あてはめ
原審が認定した事実によれば、Cは昭和26年4月中、遅くとも同月30日の選挙期日までには、旧住所地である土岐郡a町から多治見市へ実際に生活の拠点を移している。このような事実関係がある以上、法的な意味での「住所」は多治見市へと移転したものと評価するのが相当である。上告人の主張は、この事実認定を覆すに足りる法令解釈上の重要な問題を含まない。
結論
Cは選挙期日までに住所を移転したと認められるため、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、住所の概念について「生活の本拠」という伝統的な解釈を維持し、その認定は事実認定の問題であることを示している。答案作成上は、単なる住民票の移動ではなく、実態としての生活拠点の移動を重視する姿勢として引用できる。
事件番号: 昭和23(オ)97 / 裁判年月日: 昭和24年4月28日 / 結論: 破棄差戻
都市に居住していた者が、空襲の激化に伴い徒歩及び汽車約一時間の地域に疎開転出し、終戦後再びその都市を職業生活の中心と定め、寝食の器具を移し、その都市に起居するに至つた場合は同市に転入手続をせず、配給物資を受けず、疎開先の選挙人名簿に登載され、家族は疎開先に居住していても、特別の事情がない限り、その時に住所を同市に移した…
事件番号: 昭和36(オ)10 / 裁判年月日: 昭和36年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の「住所」の認定において、客観的な事実関係により生活の本拠が当該地にないことが明らかに判定できる場合には、本人の主観的意欲を考慮する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、a村に住所を有することを前提に選挙権や被選挙権(公職選挙法9条、10条)を主張したが、原審において客観的な生活実…
事件番号: 昭和28(オ)1286 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙の投票において、特定の候補者の氏名が正確に記載されていない場合であっても、諸般の事情を考慮して当該候補者に対する投票であると合理的に認められるときは、これを有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:本件は選挙における投票の効力が争われた事案である。係争の投票6票について、特定の候補者Bの氏…
事件番号: 昭和35(オ)493 / 裁判年月日: 昭和35年9月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、候補者の氏名を正確に記載していない投票であっても、その記載内容から特定の候補者を指すと客観的に認められる場合には、当該候補者に対する有効投票として認められる。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、被上告人(候補者)に対するものと考えられる投票の中に、「D…
事件番号: 昭和32(オ)193 / 裁判年月日: 昭和32年5月24日 / 結論: 棄却
県議会議員選挙で「小畑」、「オバタ」、「おばた」と記載されている投票は、同時に行われた知事選挙の候補者中に小畑Dがある場合には、議員候補者小幡谷Cに対する有効投票とは認められない。