判旨
肩書付きで署名・捺印された書面が、個人の保証義務を認める趣旨であるか否かは、書面の形式のみならず、その作成に至る経緯等の事実関係を総合して判断されるべきである。
問題の所在(論点)
法人の役員が、その肩書を付して署名・捺印した誓約書等の書面を提出した場合において、当該役員個人が保証責任を負うという合意(保証契約の成立)が認められるか。
規範
意思表示の解釈にあたっては、書面の文言や形式のみに拘泥せず、当事者がその書面を作成・提出するに至った動機、目的、およびその書面を差し入れることによって達成しようとした法的な意図を、諸般の事情から合理的に判断すべきである。
重要事実
上告人会社と訴外D防水布株式会社との手形取引に際し、D社の専務取締役であった被上告人が「誓約書」に捺印した。この誓約書には、被上告人の氏名とともに「D防水布株式会社専務取締役」という肩書が記載されていた。上告人は、この誓約書によって被上告人が個人の立場で手形債務を保証したと主張したが、被上告人は会社を代表して差し入れたものであり、個人保証の意思はなかったと争った。
あてはめ
原審は、誓約書に記載された被上告人の肩書が「D防水布株式会社専務取締役」となっていた事実に着目した。被上告人は、あくまで会社役員としての地位において書面に捺印したものであり、個人として保証債務を負担する趣旨ではないと認めるのが相当であると判断した。最高裁も、証拠関係に照らせばこのような原審の事実認定および判断は正当として、これを是認した。谷村裁判官の反対意見では、会社が責任を負うことは法律上当然であり、個人保証と解さなければ書面の意義が失われるとの指摘があったが、法廷の多数意見はこれを採用しなかった。
結論
被上告人が個人保証をした趣旨とは認められず、保証責任を否定した原判決は維持される。
実務上の射程
契約書の署名欄に「代表取締役」や「専務取締役」等の肩書がある場合、原則としてそれは会社を代表する意思表示と解され、個人保証の成立には、個人として責任を負う明確な文言や特段の事情が必要となる。答案上は、意思表示の解釈(民法91条等)における事実認定の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)1360 / 裁判年月日: 昭和37年10月30日 / 結論: 棄却
振出人欄に「B」、その肩書部分に「たからや」の記載がなされ、右「B」名下に「有限会社D洋装店代表取締役印」の押印がなされている約束手形の振出人は、有限会社D洋装店と認めるのが相当である。