民法上の組合の代表者が、組合のために、その組合代表者名義で約束手形を振出した場合には、同組合の組合員は、共同振出人として、同手形について合同してその責を負うものと解するのが相当である。
組合の代表者名義で提出された約束手形に対する組合員の責任の有無。
手形法75条7号,手形法47条
判旨
民法上の組合の代表者が権限に基づき組合のために組合代表者名義で手形を振り出した場合、各組合員は手形上に氏名が表示されていなくても、共同振出人として合同して手形上の責任を負う。
問題の所在(論点)
民法上の組合の代表者が、組合のために「組合名および代表者肩書・氏名」を記載して手形を振り出した場合、手形面に氏名が記載されていない他の組合員も手形法上の責任を負うか。手形行為における顕名主義(手形法上の責任主体が証券面上に表示されるべきとの原則)との関係が問題となる。
規範
民法上の組合における業務執行組合長が、その権限の範囲内において組合のために手形を振り出したときは、手形面に組合員各自の氏名が表示されていなくても、全組合員が共同振出人として合同して手形債務を負担する。
重要事実
定置漁業の経営を目的とする民法上の組合において、組合員の一人であるEは組合長理事として組合を代表し取引する権限を有していた。Eは組合が上告人から買い受けた製縄代金の支払のため、組合代表者名義(「D定置漁業組合組合長理事E」)をもって本件約束手形2通を振り出した。これに対し、他の組合員である被上告人らが、手形面に自らを表示していないことを理由に手形上の責任を否定したため、上告人がその支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、Eは組合長として組合を代表して第三者と取引する正当な権限を有していた。また、本件手形は組合の債務支払のために「組合長理事」という肩書を付して振り出されており、組合のために振出されたものである。このような場合、組合という団体性は各組合員の結合体にほかならないため、代表者名義による振出しは全組合員が共同して行ったのと同視できる。したがって、各組合員の氏名が個別に表示されていなくとも、各組合員が共同振出人としての責任を負うと解するのが相当である。
結論
被上告人ら組合員は、本件手形について共同振出人として合同してその責を負う。したがって、上告人の請求は認められ、原判決は破棄される。
実務上の射程
本判決は、民法上の組合における代理・代表関係において、厳格な顕名主義を緩和し、組合代表者名義の署名を全組合員への帰属を認める根拠とするものである。答案上は、手形行為の顕名(手形法上の署名)の解釈として、組合名義での行為が全組合員に及ぶことを論証する際に引用する。ただし、反対意見が指摘するように手形取引の安全(不渡処分の対象等)の観点からは批判もあり、適用範囲には留意が必要である。
事件番号: 昭和33(オ)990 / 裁判年月日: 昭和34年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】組合名義の使用を包括的に承認していた者が、その名義を用いて振り出された手形について、支払義務を負うと判断された事例である。 第1 事案の概要:訴外Dは、上告人(組合)から、巾着網漁業に必要な取引について上告人組合名義を使用することを承認されていた。Dはこの名義を用いて本件手形を振り出した。被上告人…