判旨
手形保証の意思表示において、署名に肩書(理事、監事等)が付記されていても、被代理人の表示を欠く場合には、原則として個人による手形保証と解される。
問題の所在(論点)
手形保証の署名に肩書の記載はあるが、被代理人(法人)の表示を欠く場合、個人としての手形保証が成立するか。
規範
手形行為において代理または代行の意図をもって署名・押印する場合であっても、被代理人の表示(代理関係の示顕)を欠くときは、署名者は原則として個人として手形上の責任を負う。肩書の付記がある場合でも、被代理人たる法人の名称等が示されていない限り、その署名は個人によるものと解するのが相当である。
重要事実
振出人である訴外組合のため、上告人らが本件約束手形に手形保証を行った。手形の附箋部分には、上告人らの住所、氏名、押印のほか、それぞれ「理事」「監事」という肩書の記載があった。しかし、被代理人である当該組合の名称の記載はなかった。
あてはめ
本件手形保証の署名には、住所、氏名、押印とともに「理事」「監事」という肩書の記載が存在する。しかし、被代理人である組合の名称が併記されていない以上、当該署名が組合を代理する趣旨であることは客観的に明らかではない。したがって、これらの記載および判示の経過事実に照らせば、上告人らが各個人として手形保証をしたものと認定するのが相当である。
結論
上告人らは個人として手形保証の責任を負う。本件上告を棄却する。
実務上の射程
手形行為の文言証券性および外観重視の原則(手形法8条等参照)に基づき、代理関係の示顕を欠く署名の責任主体を判断する際の基準となる。答案上は、法人代表者や役員が個人として責任を負うか、法人が責任を負うかの境界線(顕名の有無)を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)693 / 裁判年月日: 昭和36年7月31日 / 結論: 破棄自判
民法上の組合の代表者が、組合のために、その組合代表者名義で約束手形を振出した場合には、同組合の組合員は、共同振出人として、同手形について合同してその責を負うものと解するのが相当である。