一 約束手形の補箋の表面になした単なる署名は保証と看做すべきである。 二 約束手形の共同振出を原因として手形金の請求をしている場合に、手形保証を理由として請求を認容したときは、当事者の申立てない事項について判決をした違法がある。
一 手形の補箋の表面になした署名と手形保証の成否 二 申立てない事項について判決をした違法のある事例
手形法31条3項,手形法77条3項,民訴法186条
判旨
約束手形の振出人以外の者が、保証等の文言を記載せずに手形の補箋に署名捺印した場合、手形法31条3項により振出人のための手形保証とみなされるが、原告が共同振出としての責任のみを追及している場合に裁判所が保証責任を認めることは、申立てない事項について判決した違法にあたる。
問題の所在(論点)
1. 補箋への単なる署名捺印により手形保証が成立するか。2. 原告が「共同振出人としての責任」を主張している場合に、裁判所が「手形保証人としての責任」を認めることが許されるか(処分権主義の成否)。
規範
1. 約束手形の補箋になされた署名捺印は、手形法77条3項・31条3項により、特段の文言がなくとも振出人のための手形保証とみなされる。2. 裁判所は、当事者が主張していない法的な構成(手形保証責任)を、当事者が主張する請求原因(共同振出責任)の範囲を超えて採用することはできず、これに反する判決は処分権主義に抵触し違法となる。
重要事実
被上告組合(原告)は、上告人A1(農業協同組合)および同A2〜A6に対し、本件約束手形を共同して振り出したものであると主張して手形金の支払を請求した。当該手形にはA1の振出署名があり、A2〜A6はこれに契印した補箋の表面に単なる署名捺印をしていた。原審は、A2〜A6について共同振出人ではなく手形保証人であると認定した上で、保証責任に基づき請求を認容したため、A2〜A6らが上告した。
あてはめ
1. 本件手形の補箋にはA2〜A6らの署名捺印があるが、保証等の文字の表示はない。しかし、振出人以外の者が手形表面(補箋含む)に署名した場合は、手形法31条3項により振出人のための保証とみなされる。したがって、実体法上は保証が成立している。2. もっとも、訴訟上の請求に照らすと、被上告組合は一貫してA2〜A6らが「共同して振出した」事実を主張しており、これを前提とした支払請求を行っている。原審がこの主張を解釈して、保証人としての責任を認めたことは、原告が申し立てていない事項について判決したものといえる。
結論
手形法上の保証の成立は認められるが、原告の主張しない保証責任に基づき認容判決をした原判決には処分権主義違反(旧民訴法396条、現行民訴法246条参照)の違法がある。したがって、A2〜A6に関する部分は破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
手形法上の「表面署名による保証」の効力を確認するとともに、民事訴訟法における処分権主義の限界を示す事例である。答案上は、手形保証の成立要件(31条3項)と、訴訟物たる手形金支払請求権の法的構成(共同振出か保証か)が峻別されるべき点に留意して論述する。
事件番号: 昭和33(オ)688 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
約束手形の第二裏書人丙が振出人甲の手形債務を保証する趣旨でその手形を第一裏書人乙に戻裏書したときは、乙は丙に対して償還を請求することができると解すべきである。