判旨
民事訴訟において、伝聞証言の証拠能力は当然に制限されるものではなく、裁判官の自由な心証による判断に委ねられる。
問題の所在(論点)
民事訴訟において、いわゆる伝聞証言に証拠能力が認められるか。また、当事者が主張していない請求原因(返還義務や損害賠償義務)について裁判所が判断を示さないことは判断遺脱に当たるか。
規範
民事訴訟法における自由心証主義のもとでは、証拠能力に原則として制限はない。したがって、伝聞証言であっても当然に証拠能力が否定されるものではなく、当該証言を事実認定の基礎として採用するか否かは、裁判官の合理的な自由心証に委ねられる。
重要事実
上告人は、被上告会社の使用人Dが関与した中古レールの売買代金を請求した。原審は、Dに売買の斡旋に関する代理権があったこと、会社はレールを受け取ったが斡旋は不成功に終わったこと、その後Dが個人としてレールを転売した事実を認定した。この認定にあたり原審は伝聞証言を採用したが、上告人はこれが証拠法則に違背すると主張して上告した。また、上告人は予備的な損害賠償義務等の判断遺脱も主張したが、第一審から一貫して売掛代金請求のみを主張していた。
あてはめ
証拠法則について、民事訴訟では刑事訴訟のような伝聞禁止の原則は適用されず、伝聞証言の証拠価値は裁判官が他の証拠と照らし合わせて評価すべき事柄である。本件原判決が伝聞証言を証拠として採用し事実認定を行ったことは、自由心証主義の範囲内であり適法である。また、判断遺脱の主張については、上告人は終始売買契約に基づく売掛代金請求のみを行っており、返還義務や損害賠償義務を訴訟上の主張として構成した形跡がないため、これらについて判示しなかったことに違法はない。
結論
伝聞証言に証拠能力は認められ、その採否は裁判官の自由な心証に属する。また、当事者の主張しない法律関係について判示しなくとも判断遺脱にはならない。上告棄却。
実務上の射程
民事訴訟における証拠能力の広範さを確認する基本判例である。答案上は、伝聞証拠の許容性を論じる際に「自由心証主義(民訴法247条)」を根拠として本判例を引用し、証拠能力ではなく証拠価値(証明力)の問題として処理する。また、処分権主義の観点から、当事者が申し立てていない給付原因について裁判所が判断する必要がないことを裏付ける際にも活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)620 / 裁判年月日: 昭和32年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が複数の証拠を総合して事実認定を行う際、特定の証人が唯一の証拠方法でないことが明らかであれば、その証拠調べの要否に関する訴訟手続上の違法は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の事実認定に訴訟法違反があると主張した。具体的には、証人Dの証言等に関連して、証拠調べの手続や事実認定の合…