判旨
僭称相続人から相続財産を譲り受けた第三者は、真の相続人による相続回復請求権が消滅する前であっても、民法162条の取得時効を援用することが可能であり、その占有に特段の瑕疵があるとはいえない。
問題の所在(論点)
僭称相続人から相続財産を譲り受けた第三者が、正当な相続人の相続回復請求権が消滅する前において、民法162条に基づく取得時効を援用することができるか。また、その際に前主の占有を承継する場合に瑕疵があるといえるか。
規範
相続回復請求権の消滅時効(民法884条)の成否にかかわらず、僭称相続人からの譲受人は、民法162条の定める取得時効の要件を満たす限り、独自に取得時効を援用して所有権を取得できる。その際、前主である僭称相続人の占有を併せて主張する場合であっても、その占有自体に相続回復請求を妨げるような特段の瑕疵(民法187条2項)があるとはいえない。
重要事実
被上告人Bは、昭和6年2月15日に僭称相続人から本件不動産の共有持分を譲り受け、その頃に引渡しを受けた。Bは爾来、所有の意思をもって平穏かつ公然に当該物件を占有管理し続けた。Bは、昭和6年12月24日(移転登記の日)を起算点として、10年の短期取得時効の援用を主張した。これに対し、真の相続人側(上告人)は、相続回復請求権との関係で時効援用を争った。
あてはめ
被上告人Bは、昭和6年2月15日に土地の引渡しを受けて以降、所有の意思をもって平穏公然に占有を継続している。Bが援用した十年の短期取得時効に関し、Bが主張した起算点(昭和6年12月24日)から算定しても、昭和16年12月24日には時効期間が満了している。占有の開始時において善意無過失であるとの認定も維持されるため、相続回復請求権の行使期間内であっても、民法162条2項の要件を充足する。前主の占有に特別の瑕疵があるとする特段の事情も認められない。
結論
僭称相続人からの譲受人は、独立して取得時効の抗弁を主張できる。本件では、登記時を起算点としても10年の時効期間が経過しており、被上告人Bの時効取得が認められる。
実務上の射程
相続回復請求権(884条)と取得時効の関係について、譲受人という第三者の立場からの時効援用を肯定した点に意義がある。答案上は、相続回復請求の相手方が僭称相続人そのものではなく、その承継人である場合に、884条の適用の有無を論じた上で、予備的抗弁として162条の取得時効を構成する際に本判例のロジックを使用する。
事件番号: 昭和30(オ)853 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼさない事実認定の過程における瑕疵や、証拠の採否、事実認定に関する不服は、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が乙第2号証の成立を不法に認めた点や、亡Dとその妻Eが被上告人と婿養子縁組をした事実に争いがないとした判示に誤りがあるとして上告した。しかし、原判決は当…
事件番号: 昭和37(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和39年2月27日 / 結論: 棄却
甲の相続権を乙が侵害している場合、甲の相続人丙の乙に対する相続回復請求権の消滅時効の期間二〇年の起算点は、丙の相続開始の時ではなく、甲の相続開始の時と解すべきである。