判旨
民法420条に基づく賠償額の予定がある場合、反対の特約等がない限り、債務者の帰責事由や損害の有無・多寡を問わず、債権者は予定された賠償額を請求できる。
問題の所在(論点)
損害賠償額の予定(民法420条1項)がなされている場合、債権者がその額を請求するために、債務者の帰責事由や現実の損害の発生を立証する必要があるか。
規範
民法420条の賠償額の予定は、反対の趣旨の契約その他特段の事情のない限り、債務不履行(履行遅滞等)があれば、それが債務者の責めに帰すべき事由に基づくか否か、および損害の有無や多少を問わず、常に債権者が予定の賠償額を得られるとする趣旨であると解すべきである。
重要事実
本件において、上告人は民法420条の解釈をめぐり、債務不履行による賠償額の予定がなされている場合であっても、債務者の帰責事由の有無や実際の損害の有無が考慮されるべきである旨を主張して上告した。原審は、これらの事情を問わず予定額の請求を認める判断を示していた。なお、具体的な事案の詳細は判決文からは不明である。
あてはめ
本件において、原審は民法420条の解釈として、特段の事情がない限り債務者の帰責事由や損害の有無を問わずに予定額の請求を認めた。最高裁もこれを妥当とし、同条の趣旨は債務不履行という事実さえあれば、過失の有無や実損害の程度にかかわらず、あらかじめ定めた額を賠償させる点にあると判断した。したがって、上告人の主張は採用し得ない。
結論
債務者の帰責事由や損害の有無を問わず、債権者は予定された賠償額を請求することができる。
実務上の射程
賠償額の予定に関する基本判例である。答案上は、特約がない限り債務者の帰責事由(過失等)の立証を不要とする文脈で使用する。ただし、現代の有力説や実務では、本判例の文言にかかわらず「債務者の帰責事由」については依然として履行遅滞等の要件として必要(または債務者が免責を立証すべき)と解する傾向が強いため、論述の際は注意を要する。
事件番号: 昭和30(オ)591 / 裁判年月日: 昭和32年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戦時下の建物疎開事業において、建物と借地権の補償を合算した「特殊の算出方式」による補償は、借地権に対する補償を欠くものではなく、憲法29条3項に違反しない。 第1 事案の概要:上告人の先代は、昭和20年3月の第六次建物疎開事業により、所有建物およびその敷地の借地権を失った。当時の東京都知事通牒は、…
事件番号: 昭和29(オ)920 / 裁判年月日: 昭和32年2月15日 / 結論: 破棄差戻
株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を所持する場合には、右土地の直接占有者は会社自身であつて、代表者は、個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特段の事情がないかぎり、個人として占有者たる地位にあるものとはいえない。
事件番号: 昭和28(オ)1242 / 裁判年月日: 昭和30年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭債務の履行遅滞に基づく損害賠償責任において、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができず、その履行遅滞につき債務者に過失があることを要しない。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、金銭債務の履行を遅滞したことについて、自らに過失がない旨を主張して損害賠償責任を争った。また、本件における履行…