判旨
金銭債務の履行遅滞に基づく損害賠償責任において、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができず、その履行遅滞につき債務者に過失があることを要しない。
問題の所在(論点)
金銭債務の履行遅滞に基づく損害賠償責任(民法412条、419条)において、債務者の過失(帰責事由)の有無が責任の成立に影響を与えるか。
規範
金銭を目的とする債務の履行遅滞については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない(民法419条3項参照)。したがって、金銭債務の履行遅滞に基づく損害賠償責任が発生するためには、債務者の帰責事由(過失)があることを要しない。
重要事実
上告人(債務者)は、金銭債務の履行を遅滞したことについて、自らに過失がない旨を主張して損害賠償責任を争った。また、本件における履行の催告において定められた期間の相当性、および解除権の行使が権利の濫用に該当するか否かが争点となったが、具体的な取引の経緯等の事実は判決文からは不明である。
あてはめ
金銭債務は特有の性質を有し、履行不能という事態が想定されない。民法419条3項の趣旨に照らせば、金銭債務の履行遅滞による損害賠償については、債務者の無過失を理由とする免責は認められないと解される。本件において、原審が「金銭債務の履行遅滞につき債務者に過失あることを要しない」と判示した点は正当であり、上告人の主張は採用できない。また、催告期間の相当性についても原審の事実認定に基づき首肯できる。
結論
金銭債務の履行遅滞においては、債務者の過失の有無にかかわらず、損害賠償責任が発生する。
実務上の射程
民法419条3項を根拠とする金銭債務の特則を確認した判例である。答案上は、通常の債務不履行(民法415条)とは異なり、金銭債務については帰責事由の有無を論じる必要がないことを指摘する際に活用する。あわせて、不可抗力による免責も認められない点に留意する。
事件番号: 昭和30(オ)700 / 裁判年月日: 昭和32年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の土地を占有する者は、正当な権原を主張立証しない限り、故意過失の推定を受け不法占有の責を免れない。この理は、不法占有者の相続人が占有を継続し、かつその相続人が未成年者であっても同様に適用される。 第1 事案の概要:被上告人は、上告人らの亡父Dに対し、土地の占有に基づく金銭支払を請求した。Dの死…
事件番号: 昭和32(オ)189 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張した損害賠償請求の範囲が特定の費目に限定されている場合、それとは別の損害(賃料相当損害等)を別個の請求として明確に主張した形跡がない限り、裁判所が当該損害について判断しなくても判断遺脱の違法はなく、釈明義務も負わない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、競落した宅地および家屋を転売で…
事件番号: 昭和23(オ)44 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
一 債務者が弁済のため現金を債権者方に持参してその受領を催告すればこれを債権者の面前に提示しなくても、現実に弁済の提供をしたものとみるのが相当である。 二 債権者が予め弁済の受領を拒み、たとえ債務者が言語上の提供をしてもこれを受領しないことが明白な場合には、債務者は、言語上の提供をしなくても、履行遅滞の責を負わない。
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。