判旨
株金払込期日前になされた株式の引受による権利の売買契約は、将来の権利発生を前提とした取引として有効であり、旧商法190条(現行会社法35条・128条1項参照)の制限下でも当事者間では法的効力を有する。
問題の所在(論点)
株金払込期日前になされた「株式の引受による権利(権利株)」の譲渡契約が、当事者間において有効か、あるいは公序良俗や当時の商法190条の制限に抵触し無効となるか。
規範
1. 株式の引受による権利(権利株)の譲渡は、具体的に権利が発生する前(株金払込期日前)であっても、将来その権利が発生した際に授受を行う趣旨の契約として締結することは可能である。 2. このような譲渡は、広義の「株式の引受による権利の譲渡」に含まれ、会社に対する関係では効力を主張できないとしても、譲渡当事者間においては有効な売買契約として法的効力を有する。
重要事実
上告人は、昭和24年9月14日、被上告会社との間で、当時増資新株の引受申込期間中であったD亜鉛株式会社の増資新株500株を買い受けた。その受渡方法は、株金払込領収証に白紙委任状を添付して行う合意であった。本件売買の当時、株金払込期日前であり具体的権利は未発生であったが、上告人は当該取引が無効であると主張して争った。
あてはめ
1. 本件売買の目的は、受渡方法が白紙委任状付株金領収証とされている点から、増資発効後の株式そのものではなく、株式の引受による権利であると解される。 2. 契約時点で具体的権利が発生していなくとも、将来の発生を待って受渡を完了する趣旨の契約は私的自治の範囲内であり、禁止される理由はない。 3. 旧商法190条(株式発行前の譲渡制限)の規定は、会社に対する関係での効力を制限する趣旨にとどまり、取引の目的が権利株である以上、契約当事者間の合意を無効とする根拠にはならない。
結論
本件売買契約は有効である。株金払込期日前の権利株譲渡であっても、当事者間においてはその効力を妨げられず、上告人の無効主張は認められない。
実務上の射程
権利株譲渡の当事者間における有効性を認めたリーディングケースである。答案上は、会社法35条(払込後の権利譲渡の対社内的効力)や同128条1項(株券発行前譲渡の対社内的効力)の場面において、「会社との関係で無効」であることと「当事者間で有効」であることを切り分ける論法として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月20日 / 結論: 棄却
試掘権者との契約の相手方において探炭の結果石炭の産出が確認された場合には試掘権者より通商産業局に対し採掘権に転願したうえ相手方のために租鉱権を設定する旨の約定がなされた等原審認定の事実関係(引用の第一審判決理由参照)のもとにおいては、鉱業法第七条の違反があるものとは認められない。
事件番号: 昭和29(オ)20 / 裁判年月日: 昭和31年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴利行為による公序良俗違反が認められるためには、相手方の無知や窮迫に乗じ、短期間に著しく過当な財産的給付を約せしめたという主観的・客観的事実が必要であり、正当な債務履行の確認にすぎない合意は有効である。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、漁業経営委任契約の解除に伴う船舶返還の代償として、船…