判旨
暴利行為による公序良俗違反が認められるためには、相手方の無知や窮迫に乗じ、短期間に著しく過当な財産的給付を約せしめたという主観的・客観的事実が必要であり、正当な債務履行の確認にすぎない合意は有効である。
問題の所在(論点)
既存の債務の履行を確認する合意や、契約解除に伴う正当な対価の支払合意が、民法90条の公序良俗に反する暴利行為として無効となるか。
規範
民法90条の公序良俗違反(暴利行為)として法律行為が無効となるためには、相手方の無知、窮迫等に乗じ、かつ、社会通念上許容される範囲を著しく逸脱した過当な財産的給付を約束させたという事情が必要である。単に既存の当然の義務の履行を確認し、あるいは正当な対価としての支払を約したにすぎない場合は、暴利行為には該当しない。
重要事実
上告人は被上告人に対し、漁業経営委任契約の解除に伴う船舶返還の代償として、船員の未払給料約18万円および漁具購入費約10万円(計28万円)の支払を約束した。さらに、別途の借入金20万円の支払も合意したが、これは既存の債務(当然の義務)の履行を確認したものであった。上告人は、これらの支払合意が過当な給付を強いる暴利行為であり無効であると主張して争った。
あてはめ
本件で支払が約束された計48万円のうち、28万円は委任契約解除に伴う船員給料や漁具費という実費相当の代償であり、不当に過大な給付とはいえない。また、残りの20万円についても、既に存在していた貸金債務の履行を再確認したにすぎない。これらは、暴利行為の典型例である「相手方の窮迫に乗じて短期間に倍額もの過当な給付を約せしめる」ような事情を欠いており、公序良俗に反する著しい不当性はないと判断される。
結論
本件の支払合意は暴利行為には当たらず、民法90条により無効となることはない。
実務上の射程
暴利行為の該当性を検討する際、主観的態様(無知・窮迫への乗託)と客観的要件(給付と反対給付の著しい不均衡)の両面から判断する実務上の枠組みを示している。特に、既存債務の履行確認や実費補填的性格を持つ合意については、公序良俗違反を否定する有力な根拠となる。
事件番号: 昭和28(オ)1230 / 裁判年月日: 昭和30年6月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】損害金月6分5厘(年78%相当)の約定は、そのことのみをもって直ちに公序良俗に反して無効であるとは認められない。 第1 事案の概要:債権者と債務者(上告人)との間で、金銭債務の不履行が生じた場合の損害金について「月6分5厘」とする約定がなされた。上告人は、当該利率が著しく高額であること、および当該…