和解契約の解除が信義則に違背しないとの判断につき、和解契約成立の事情をしんしやくしたことを適法とした事例。
判旨
和解条項の履行につき信義則上の義務に違背するか否かの判断において、和解成立に至るまでの事情を斟酌することは正当である。和解成立の経緯は、履行の際に要求される信義則上の誠実義務の程度を左右する重要な判断要素となる。
問題の所在(論点)
和解契約の解除が信義則違反や権利の濫用となるかを判断する際に、和解条項の内容そのものだけでなく、和解が成立するに至った経緯や背景事情を考慮することができるか。
規範
和解契約に基づく義務の履行について、その行為が信義則(民法1条2項)に反するか、あるいは権利の濫用(同条3項)に当たるかを判断するにあたっては、当該和解が成立するに至った具体的な事情を斟酌すべきである。和解成立の事情の如何によって、その履行に際して要求される信義則上の義務の程度も異なるものと解される。
重要事実
上告人と被上告人との間で和解契約が成立したが、その後、被上告人が本件契約を解除した。上告人は、和解成立後の履行状況の判断において、過去の行動や人格、和解成立の事情を問題にすべきではないと主張して、本件解除が信義則違反または権利の濫用にあたると争った。
あてはめ
判決文によれば、和解成立の事情によって、履行につき要求される信義則上の義務の程度は異なる。原審は本件和解成立の事情を詳細に斟酌した上で、被上告人による解除を信義則違反でも権利の濫用でもないと判断している。上告人は過去の行動等を重視すべきでないと主張するが、和解に至る経緯は誠実義務の具体的内容を画定する要素となるため、これらを考慮した原審の判断は正当であるといえる。
結論
被上告人による本件契約解除は信義則に違背せず、権利の濫用にも当たらないため、有効である。
実務上の射程
契約の履行や解除が信義則違反とされるかの判断において、単に現在の契約形式のみならず、締結に至るまでの当事者間の人間関係や経緯(先行行為)を考慮できることを示す。司法試験においては、民法1条2項の具体化として、個別事情を拾って義務の程度を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)1215 / 裁判年月日: 昭和37年5月25日 / 結論: 棄却
当事者間の共同事業を達成するために、市復興区画調整委員会等に対する運動費として、当事者の一方が相手方に対し、合計金三〇万円を交付した場合、右が不法原因給付に当るとしても、後にその返還を約する当事者間の合意は、民法第七〇八条の禁ずるところではない。