一 昭和二五年六月二一日から同年七月一三日までの間に、証券取引所の会員でない者が、会員に対し、いわゆる店頭取引として有価証券の売付を委託するにあたり、右有価証券を有しなかつたとしても、右売付委託は、証券取引法第一三三条に違反しない。 二 企業再建整備法に基く決定整備計画によつて旧株式に割当てられた第二会社株式の買受権を、買受代金払込期間最終日までに右代金領収証を引渡して決済する約定で売付を委託する契約は、たとえ右第二会社設立以前であつても、当事者間において有効である。
一 有価証券を有しないでする売付委託の効力。 二 企業再建整備法にいゆる第二会社設立前における右会社株式買受権売付委託契約の効力。
企業再建設備法(昭和26年法律44号による改正前)5条1項,企業再建設備法(昭和26年法律44号による改正前)6条1項7号,企業再建設備法(昭和26年法律44号による改正前)6条1項19号,企業再建設備法(昭和26年法律44号による改正前)39条の4,企業再建設備法(昭和29年法律183号による改正後のもの)29条の4
判旨
有価証券を有しない状態での売付委託(空売り)は、直ちに賭博行為や公序良俗違反とはいえず、また当時の証券取引法上の制限も場外取引には及ばない。第二会社株式の買受権譲渡についても、当事者間の契約としての効力は有効に認められる。
問題の所在(論点)
1. 現実の株券を有しない売付委託が、差金のみを目的とする賭博行為として無効になるか。 2. 証券取引法上の空売り制限規定が、非会員による場外取引にも及ぶか。 3. 法律に譲渡可能の明文がない株式引受権等の譲渡契約が、当事者間で有効か。
規範
1. 有価証券を有しない状態での売付委託であっても、証拠金の差し入れがあり、かつ将来の現実の引き渡し(決済)を遂げる約定がある場合には、単なる差金決済を目的とする賭博行為には当たらない。 2. 証券取引法133条(当時)の空売り制限は、証券取引所の会員が市場で行う取引を対象とするものであり、非会員による場外取引(店頭取引)には適用されない。 3. 特別法上の権利譲渡制限の規定は、特段の事情がない限り対会社関係の効力を定めたものにすぎず、当事者間の合意(債権的効力)を否定するものではない。
重要事実
上告人は被上告人に対し、第二会社(Dレーヨン株式会社)の株式買受権を、払込期間最終日までに代金領収証を現実の引き渡しによって決済する約定で売付を委託した。上告人は委託時に証拠金および証券を差し入れていたが、当時当該株式の株券等は未発行であり、上告人が実際に買受権を有していたか不明な状態であった。上告人は、本件委託が賭博行為、証券取引法違反、または企業再建整備法違反により無効であると主張した。
あてはめ
1. 本件では、現実の代金領収証の引き渡しによる決済を遂げる約定があり、証拠金も差し入れられている。したがって、上告人が当時権利を有していなかったとしても、差金の授受のみを目的とする賭博行為とは断定できない。 2. 当時の証券取引法133条および関連規則は、取引所会員の市場取引を制限する趣旨であり、本件のような非会員間の場外取引(店頭取引)を制限する法令は存在しない。 3. 企業再建整備法29条の4は、会社に対する効力を明確化する規定であり、同法が第二会社株式の引受権譲渡に触れていないからといって、当事者間の譲渡合意そのものを否定する根拠にはならない。
結論
本件売付委託契約は有効であり、賭博行為や証券取引法等の法令違反による無効は認められない。
実務上の射程
空売りの強行法規違反・公序良俗違反(賭博)の該当性を判断する際、現実の決済合意の有無や取引の態様を重視する判断枠組みとして活用できる。また、会社法上の権利譲渡制限規定が対外的な効力(会社への対抗力)に限定され、当事者間の合意は有効に成立しうるという「相対的無効(または対抗要件的構成)」の考え方を示す事例としても参照しうる。
事件番号: 昭和41(オ)957 / 裁判年月日: 昭和42年12月14日 / 結論: 棄却
甲に対する貸金の担保として事実上甲所有の株券を預つていた乙信用金庫が、甲の委任に基づいて甲の代理人として丙証券会社に右株式の売却を依頼し、その売得金を一たん乙金庫の甲名義の普通預金口座に預け入れた後、その預金から自己の甲に対する貸金の弁済を受けた場合において、丙が乙に対して交付した前期売却代金が誤つて右株式の時価を大巾…