株式会社が、取締役会の決議により株主に新株引受権を付与するにあたり、株主が新株引受権を行使する条件として、右会社の資金計画を予定どおり達成するための手続を行なうに必要最少限度の期間を見込み、払込期日よりも若干前の日を申込期間の末日としたうえ、株式申込の際に払込金額と同額の申込証拠金を添えることを要することと定め、かつ、その申込証拠金が払込期日に払込金に充当されるまでの期間中これに利息をつけない旨を定めることは許される。
取締役会の決議により株主に新株引受権を付与するにあたり株式申込の際に払込金額と同額の申込証拠金を添えることを要する等の条件を定めることは許されるか
商法280条ノ2,商法280条ノ4,商法280条ノ5,商法280条ノ7,商法280条ノ9
判旨
取締役会が株主に新株引受権を付与する際、行使条件として申込証拠金の提供を求めることは、その条件が不法・不合理でなく、かつ株主に通知されている限り有効である。
問題の所在(論点)
取締役会が株主に新株引受権を付与するにあたり、法定(当時の商法280条ノ5等)にない「申込証拠金の払込み」という条件を付すことができるか。また、その条件を満たさない申込を拒否し失権させることは適法か。
規範
会社が取締役会の決議により株主に新株引受権を付与する場合、その行使に条件を付すことは、①その条件が不法ないし不合理なものでなく、かつ、②それが法定の期間内に各株主に通知される限り許容される。また、申込期間の末日を払込期日より前の日と定め、引受権行使の条件として払込金と同額の申込証拠金を添えるよう要求することも、実務上の必要性から不合理とはいえず、適法な条件となり得る。
重要事実
上場会社である被上告人は、新株発行に際し、取締役会決議により株主に新株引受権を付与したが、その行使条件として、申込期間(払込期日の11日前まで)内に「払込金額と同額の申込証拠金」を添えて申し込むことを定めた。株主である上告人は、申込期間内に証拠金を添えずに申込書のみを提出し、拒否された。上告人は払込期日前日に払込金を郵送したが受領を拒否され、失権したため、損害賠償を請求した。
あてはめ
本件条件は、①資金計画の達成、失権株の早期確定、新株発行事務の簡素化等の目的から合理性があり、上場会社における慣行とも合致する。また、申込証拠金に利息を付さない点も、短期間の事務処理の煩を避けるものとして不当とはいえない。②本件では当該条件が各株主に通知されており、上告人も了知し得た。したがって、上告人が証拠金を添えずにした申込は条件を欠き、申込としての効力を生じないため、会社がこれに基づき受付を拒否したことに違法はない。
結論
本件新株引受権行使の条件は有効であり、条件を満たさない上告人の申込を拒否した被上告人の措置は適法である。上告人の請求は認められない。
実務上の射程
会社法下においても、株主割当て(202条)において申込期間や払込期日、申込証拠金の要否を取締役会(または決定機関)が定める際、株主間の平等や合理性を欠かない限り、実務上の必要性に基づく柔軟な条件付加を認める重要な先例となる。
事件番号: 昭和29(オ)690 / 裁判年月日: 昭和31年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】株金払込期日前になされた株式の引受による権利の売買契約は、将来の権利発生を前提とした取引として有効であり、旧商法190条(現行会社法35条・128条1項参照)の制限下でも当事者間では法的効力を有する。 第1 事案の概要:上告人は、昭和24年9月14日、被上告会社との間で、当時増資新株の引受申込期間…
事件番号: 平成22(受)1212 / 裁判年月日: 平成24年4月24日 / 結論: 棄却
1 取締役会が商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合において,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がないときは,当該新株予約権の発行後に上記行使条件を変更する取締役会決議は,上記行使条件の…