一、東京証券取引所受託契約準則一三条の九は、顧客が所定の時限までに買付代金を会員に交付しないときには、会員は、任意に、当該売買取引を決済するために、顧客の計算において買付証券を売却して買付代金に充当する権限があることを定めたものであり、会員は、このような場合、直ちに買付証券を売却すべき義務を負うものではない。 二、会員の反対売買権行使の時期が特に信義則上顧客にとり不当と認められる特段の事情がないかぎり、会員は、証券の市場価格の変動による顧客の損失について、なんらの責任を負わない。
一、東京証券取引所受託契約準則一三条の九による会員の反対売買権の性質 二、会員の反対売買権行使の時期と証券の市場価格の変動による顧客の損失
商法556条,商法524条
判旨
証券取引において顧客が代金を支払わない場合、証券会社は受託契約準則に基づき反対売買を行う権限を有するが、直ちに反対売買を行う義務を負うものではない。そのため、反対売買の時期が信義則上不当と認められる特段の事情がない限り、価格変動による損失について証券会社は責任を負わない。
問題の所在(論点)
顧客が証券の買付代金を期限までに支払わない場合、証券会社は受託契約準則に基づき、直ちに反対売買を行って損害の拡大を防止すべき義務を負うか。また、反対売買の時期の遅延について証券会社が責任を負うべき基準は何か。
規範
証券取引所受託契約準則(本件では13条の9)に基づき、顧客が買付代金を支払わない場合に証券会社が行う反対売買は、証券会社に与えられた「権限」であって「義務」ではない。したがって、反対売買を行う時期の選択が、信義則上顧客に対して著しく不当と認められるような特段の事情がない限り、証券会社は反対売買の遅延に伴う市場価格の変動について損害賠償責任を負わない。
重要事実
上告人(顧客)は証券会社に対し、普通取引による証券の買付けを委託したが、所定の時限までにその買付代金を交付しなかった。証券会社は、東京証券取引所受託契約準則に基づき、代金に充当するため当該証券を反対売買(売却)して決済したが、上告人は、証券会社が直ちに売却しなかったために価格下落による損失を被ったとして、その責任を追及した。
あてはめ
本件における受託契約準則の規定は、決済を確実にするために証券会社に売却権限を付与したものであり、義務を課したものではない。本件において、証券会社が反対売買を直ちに行わなかったとしても、その権利行使の時期が信義則に照らして上告人に対し不当であるといえるほどの「特段の事情」は認められない。したがって、上告人が主張する価格変動による損失について、証券会社に債務不履行や不法行為上の責任は認められない。
結論
証券会社は、反対売買を直ちに行うべき義務を負わず、その時期が信義則上不当と認められる特段の事情がない限り、顧客の損失について責任を負わない。
実務上の射程
本判決は、証券取引における受託契約準則の性質を権限規定と解した点に重要性がある。答案上では、信義則を根拠とした損害拡大防止義務の成否が問題となる場面で、本判決の「原則として義務ではない」という規範を引きつつ、「特段の事情」の有無(価格の激変、顧客からの明確な反対売買の指示、証券会社側の不誠実な対応等)を具体的事実から検討する際に用いる。
事件番号: 昭和23(オ)107 / 裁判年月日: 昭和25年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有価証券の買付委託において、仲買人が委託者に先立って株式移転税を納付した場合、仲買人は委託者に対し、当該移転税相当額を請求する法律上の権利を有する。 第1 事案の概要:1. 買付委託者(上告人)は、証券仲買人(被上告人)に対し、株式の買付を委託した。 2. 被上告人は、当該委託に基づき株式を落札し…